研究課題/領域番号 |
22KF0304
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大場 正昭 九州大学, 理学研究院, 教授 (00284480)
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研究分担者 |
BORUAH PURNA 九州大学, 理学研究院, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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キーワード | MXene / 配位高分子 / MOF / 多核クラスター錯体 / MOP |
研究実績の概要 |
本研究では、マイクロ流路センシングデバイスとして応用を目指して、複合原子層化合物であるマキシン(MXene)と多孔性配位高分子 (MOF) および多核クラスター錯体分子(MOP)を用いた新規ナノ複合体を開発する。本年度は、(1) MXeneとMOF、および(2) MXeneとMOP、からなる複合ナノシートを合成し、その機能評価を進めた。 (1)では、MXene表面におけるMOFの簡便なin situ合成法を開発し、NbCベースのMXeneの単層膜とHKUST-1, MIL-100, ZIF-8等の様々なMOFとの複合化に成功した。SEMおよび TEM観察により、負に帯電した MXene 表面と金属イオンが相互作用することで、MOF粒子の成長が促進されることを明らかにした。得られた複合体は高い電子移動特性を示し、ドーパミンおよび人体に存在するアスコルビン酸と尿酸の高感度かつ選択的電気化学センシングに成功した。この検出能は 1-100 nM の範囲で直線性を示し、検出限界は0.2 nM であった。 (2)では、TiCおよびNbCベースのMXeneを単層化し、シリルアルキルスルホン酸で表面を官能基化した。このMXeneを正に帯電させたZrベースMOPと複合化した。SEMおよび TEM観察により、MOP のMXene表面への均質な分布を確認した。この複合体はドーパミンの電気化学センシング能を示し、検出限界は 0.7nM であった。更に MOP 部位に Reイオンを導入すると、二酸化炭素の光還元能を示し、一酸化炭素への選択的変換率は87%であった。 以上の結果は、MXeneの高い導電性とMOFおよびMOPによる多孔性を兼ね備えた複合体は、様々な有機分子や無機分子に対する超高感度電気化学センサー、ならびに新しい触媒開発につながると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
予定通り表面修飾したMXene膜の合成とMOFおよびMOPとの複合化に成功した。得られた複合体はドーパミンの電気化学的センシングにおいて、期待以上の検出能を示した。また、MOPとの複合体が高選択的な二酸化炭素の光還元能を示した点は、想定以上の成果と言える。MXene-MOFの複合体に関しては、既に論文を投稿した。MXene-MOFおよびMXene-MOP と酵素との複合体の合成にも成功しており、現在機能評価を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の成果より、MXene-MOFおよびMXene-MOP複合体は、ともにドーパミンに対して高感度な電気化学的センシング能を示すことを見出した。今後は機能を最適化するためのMOFおよびMOPの種類と複合化比率を検討する。 酵素との複合化に関しては、具体的にはペルオキシダーゼをMXene-MOFおよびMXene-MOP複合体に吸着させ、基質の酸化による着色反応を利用して活性を評価する。さらに、食中毒物質のOHラジカルの消費に着目して、食品毒物の検出への応用を検討する。複合体単独でもこれらの活性について評価し、酵素様活性の実現についても検討する。 マイクロ流体センシングデバイスへの応用については、インクジェット印刷やスクリーン印刷による紙ベースのデバイスを作製する。比色法や電気化学的な検出のために、最適な比色試薬やインクに含める導電性物質を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により来日が遅れたため、本課題の研究期間は2022年7月1日から2024年6月30日までとなっている。そのため、2024年度の4-6月の3ヶ月の研究費として447,218円を繰り越した。繰り越した金額は、試薬等の購入と論文投稿のための費用としての使用を計画している。
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