研究課題/領域番号 |
22F22026
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
安田 琢麿 九州大学, 高等研究院, 教授 (00401175)
|
研究分担者 |
HWANG SUNBIN 九州大学, 高等研究院, 外国人特別研究員
|
研究期間 (年度) |
2022-09-28 – 2025-03-31
|
キーワード | 有機半導体 / 熱電変換 / ドーピング / イオンゲル / 状態密度増幅 |
研究実績の概要 |
今年度は、本研究の遂行上必須となる有機熱電素子評価に特化した高性能測定・自動分析システムの開発を行った。有機半導体材料の低い電気伝導率から由来する浮遊起電力は有機熱電材料の評価に大きな誤差を与える。これを解決するために従来の測定系に多チャネル高入力インピーダンス計装増幅器を搭載し、有機熱電材料の熱電特性をより精密かつ高速で自動評価・分析できるシステムを新しく構築した。さらに水や酸素に敏感な有機熱電材料を評価するために不活性窒素環境下で特性評価できる環境も構築した。続いて、高性能測定・自動分析システムを用いて、ドーパント材料の種類に関わらず有機半導体の本質的な熱電特性を調べられる革新的な素子プラットフォームを構築した。本研究で開発した誘電率の高いイオンゲル誘電層を用いた両極性有機熱電変換素子評価プラットフォームは、真性有機半導体のフェルミ準位をイオンゲルで電気化学的に大きく変調しp-n型両熱電変換特性を調べることができる。また、イオン液体の濃度を調整したイオンゲル誘電層を利用しているため酸化・還元状態を意図的に長時間保持することができ、一種の半導体とイオンゲルのみでp-n型両熱電変換素子を作製できるためコスト削減に繋がる有機両極性熱電変換素子を実現できる。キャリア移動度の高い有機半導体から新規材料まで、材料そのものが有する潜在熱電変換特性を網羅的に調査できるため、有機熱電材料の研究開発や材料探索に大きな役割を果たすことが期待できる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有機熱電材料の最適な熱電特性を引き出すためには、有機半導体に適切なドーパントを用いて化学的なドーピングを行う必要がある。ドーパント材料の種類に関わらず有機半導体の本質的な熱電特性を調べるために、本研究では誘電率の高いイオンゲル誘電層を利用した素子評価プラットフォームを構築した。素子プラットファームの具体的な構造としては、下部電極パターンの上に絶縁性レジスト樹脂を用いてフォトリソグラフィで作製した空洞があり、半導体材料とイオンゲル、そして上部電極が積層された構造をもつ一つのセルで構成される。実際の測定では、セルの対角方位に位置する四つ電極からは温度差、熱起電力、四端子電気伝導率の測定を逐次的に行うことができ、電界効果トランジスタのようにゲートバイアス電圧を印加した時の特性を網羅的に計測できる仕組みとなっている。さらに、透明なガラス基板と透明電極を用いることで半導体がイオン液体によって酸化・還元ドーピングされる際のバンド幅の変化などの光学特性変化を組み合わせて調べることもできる。 今年度は短期間であったが、有機熱電素子評価に特化した高性能測定・自動分析システムの開発を行い、ドーパント材料の種類に関わらず有機半導体の本質的な熱電特性を網羅的に調べられる素子プラットフォームを構築することに成功した。必須分析装置と素子評価プラットフォームの立ち上げ作業が予定通り完了したので、次年度の研究実施計画に移行し、潜在能力の高いコア有機半導体の探索に取り掛かる予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
熱電変換素子の電力変換効率が低下する最大の原因は、高濃度にキャリアドープされた半導体が高い電気伝導率を示す一方で、Seebeck係数がそれに従い激減することにある。今後は、立ち上げた有機熱電素子評価に特化した高性能測定・自動分析システムを使用して、潜在能力の高いコア有機半導体を探索する。その後、上記の根本課題を解決するために、局所的に状態密度を高めることができる有効な状態密度増幅材料の探索を行い、コア有機半導体に適応させることで、高い電気伝導率を維持しながらSeebeck係数を増幅できる熱電変換素子の開発を行い、熱電変換効率のさらなる向上を試みる予定である。
|