研究課題
水素供給技術に関わる工学技術の発展は、将来の水素社会の実現のために必要不可欠である。本研究ではチタン水素化物の水素吸収ならびに放出過程を先進透過電子顕微鏡法と放射光分光による「その場」実験により追求し、Ti水素吸蔵合金の相変化過程を原子レベルで明らかにすることを目的とした。具体的には、昇温過程における1)環境型透過電子顕微鏡を用いた水素環境下「その場」観察実験、2)「その場」放射光分光法によるX線吸収端スペクトルおよびX線回折スペクトルの取得並びに解析を行った。項目1)については、Ar雰囲気中での300 ℃までの昇温に伴ってTiH2ナノ粒子はδ-TiH2単結晶粒子へと変化した。更なる600 ℃までの昇温に伴って水素の放出が生じ、TiH2試料はδ-およびβ―TiHxを経て、最終的にα-Tiへと相変化した。次に水素ガス雰囲気中で450 ℃まで冷却すると水素吸収が観察され、水素化物を形成した。以上のように、ガス雰囲気中での昇温ならびに冷却過程の「その場」観察実験に成功し、微細組織ならびに結晶鋼構造に関する情報を得た。項目2)については、昇温過程でTi K吸収端の吸収スペクトルを取得した。出発物質であるTiH2中のTiはおよそ300 ℃までは酸化状態である+2価を示したが、441 ℃以上の温度においてTiHxへと還元され、554 ℃以上の温度で金属Tiを示すスペクトルの特徴が現れ始め、ほぼ0の価数状態を示した。同様に粉末試料を用いた「その場」昇温X線回折実験を実施し、TiH2を示す回折パターンは、δ-TiH2からβ-Tiおよびα-Tiへと変化し、これらは透過電子顕微鏡観察から得た結果と同じ傾向を示した。
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Materialia
巻: 33 ページ: 101974
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Journal of Material Science and Technology
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https://www.qpn.kyushu-u.ac.jp/