• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2023 年度 実施状況報告書

革新的な複合材料による福島第一原子力発電所廃水からの放射性セシウム除去

研究課題

研究課題/領域番号 22KF0308
配分区分基金
研究機関九州大学

研究代表者

久場 隆広  九州大学, 工学研究院, 教授 (60284527)

研究分担者 KHANDAKER SHAHJALAL  九州大学, 工学研究院, 外国人特別研究員
研究期間 (年度) 2023-03-08 – 2025-03-31
キーワードセシウム / 化学賦活 / プラズマ処理 / 熱アルカリ処理 / 炭化物 / 汚泥溶融スラグ / LDH / 吸着
研究実績の概要

本研究では、竹炭や木炭といった炭化物や汚泥溶融スラグ、さらには、プルシアンブルーなどを複合化した高効率で、低価格、環境に優しい複合吸着剤を開発し、実験室規模でその吸着能力や吸着メカニズムの解明を行うとともに、特異的セシウム吸着能の向上のための賦活化法の検証を行う。革新的な複合材料による福島第一原子力発電所廃水および水環境中からの放射性セシウム除去を目指している。
初年度は、当研究グループの過去のデータを精査し、また、文献調査を中心に、竹炭や木炭の炭化条件を検討した。硝酸熱水処理やプラズマ処理による賦活化法を検討し、Cs除去率との関係を明らかにした。また、汚泥溶融スラグまたは合成ゼオライト、層状複水酸化物 (Layered Double Hydroxide: LDH) とプルシアンブルーなどを複合化した吸着剤についても検討した。
さらに、高圧用反応分解容器内での汚泥溶融スラグの熱アルカリ処理条件を明らかにし、Cs吸着能およびCs選択性とその処理条件との関係を実験的に明らかにした。国内5カ所の汚泥溶融スラグについて実験的に検討し、また、スラグ上に形成されたゼオライト種の同定にはX線回折法 (XRD) および蛍光X線分析装置 (XRF) を用いた。結論としては、珪藻土と比較し、汚泥溶融スラグでは純度が低く、ケイ素の含有率が低いことから、Cs吸着能を高めることは出来ても、ゼオライトの一種であるモルデナイトといったCs選択性の高い成分をスラグ上に合成することが難しいことが分かった。
本年度 (基金化1年目) は、熱アルカリ処理の時間ごとに、形成されるゼオライト種が変化することを明らかにし、Cs選択性の高い成分をスラグ上に合成できる可能性が示唆された。さらに、LDHにヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム (K4Fe(CN)6) を複合化した吸着剤を合成し、Cs選択性の検討を始めた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の研究期間は3年間である。その当初の研究目的は、竹炭や木炭といった炭化物や汚泥溶融スラグ、さらには、プルシアンブルーなどを複合化した高効率で、低価格、環境に優しい複合吸着剤を開発し、実験室規模でその吸着能力や吸着メカニズムの解明を行うとともに、特異的セシウム吸着能の向上のための賦活化法の検証を行うことである。第1年度において、以下の成果が得られた。おおむね順調に進展している。
文献調査や当研究グループでの過去の成果から、竹炭や木炭の炭化条件、さらに、硝酸熱水処理やプラズマ処理による賦活化法があり、Cs除去率と処理の関係を整理できた。また、汚泥溶融スラグまたは合成ゼオライト、層状複水酸化物 (Layered Double Hydroxide: LDH) とプルシアンブルーなどを複合化した新規吸着剤のCs吸着能を議論した。
さらに、高圧用反応分解容器内での汚泥溶融スラグの熱アルカリ処理条件を明らかにし、Cs吸着能およびCs選択性とその処理条件との関係を実験的に明らかにした。結論としては、珪藻土と比較し、汚泥溶融スラグでは純度が低く、ケイ素の含有率が低いことから、Cs吸着能を高めることは出来ても、ゼオライトの一種であるモルデナイトといったCs選択性の高い成分をスラグ上に合成することが難しいことが分かった。一方、熱アルカリ処理の時間ごとに、形成されるゼオライト種が変化することを明らかにし、Cs選択性の高い成分をスラグ上に合成できる可能性が示唆された。
さらに、層状複水酸化物 (Layered Double Hydroxide: LDH) をベースとした複合材料の検討を開始した。LDHにヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム (K4Fe(CN)6) を複合化した吸着剤を合成し、Cs吸着能ならびにCs選択性の検討を始めた。

今後の研究の推進方策

本研究『減容性・バックアップ性を備えたCs吸着材のための粒状体プラズマ処理装置の開発』の研究期間は2年間である。その当初の研究目的は、(1)プラズマ賦活化によるセシウム吸着能の改善とそのための装置開発、 (2)セシウム吸着剤の吸着能維持性とバックアップ性能の評価である。2年間の研究期間において得られた成果を基に、以下の様に、今後、研究を推進する。
(1)大気圧非平衡プラズマ処理法を市販の活性炭に適用したところ、熱硝酸処理といった化学賦活化法と比較すると、その比Cs吸着量は1/5~1/10程度劣ることを確認した。大気圧非平衡プラズマ処理の際の条件 (処理時間、電圧、酸素ガス流量など) をパラメータとし、その比Cs吸着量を予測可能な重回帰式の作成を行った。同様な解析を行うことで現有の装置を如何に改良すべきかを提示し、粒状体プラズマ処理装置の開発につなげる。
(2)大気条件下で賦活化活性炭を保持し、経時的にその吸着能の変化を評価した。1年間にわたり検証したところ、吸着能の低下はあまりなく、一方、再度のプラズマ賦活化により、むしろ、時間の経過ともに、Cs吸着能が向上するという興味深い結果が得られた。ドライ状態で、少なくとも1年以上、吸着剤の性能が維持し得 (吸着能維持性)、また、そのバックアップ性の高さが明らかになった。より長期の吸着能維持性およびバックアップ性を評価し、同時に、化学賦活化炭化物よりも劣る吸着能を補うための、プラズマ賦活化活性炭の必要量の試算やコスト計算を行う。
(3)2年間の研究で、大気圧非平衡プラズマ装置について、電極および絶縁材の種類が及ぼす影響の検討の必要性が分かった。銅板電極から、例えば、電子射出量の高いと思われるニッケル電極などに替えて検討したい。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] ダッカ工科大学(バングラデシュ)

    • 国名
      バングラデシュ
    • 外国機関名
      ダッカ工科大学
  • [雑誌論文] From industrial jute fibre spinning wastes to biofibre-reinforced plastics2024

    • 著者名/発表者名
      Shahjalal Khandaker, Diloara Akter, Mahmudul Hasan, Abu Saifullah, Hadi M. Marwani, Aminul Islam, Abdullah M. Asiri, Mohammed M. Rahman, Md. Munjur Hasan, Takahiro Kuba, Md. Rabiul Awual, Forkan Sarker
    • 雑誌名

      Materials Chemistry and Physics

      巻: 313 ページ: 128586 1-10

    • DOI

      10.1016/j.matchemphys.2023.128586

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Assessment of heavy metals accumulation by vegetables irrigated with different stages of textile wastewater for evaluation of food and health risk2024

    • 著者名/発表者名
      Jahidul Hassan, Md. Mijanur Rahman Rajib, Md. Noor-E-Azam Khan, Shahjalal Khandaker, Md. Zubayer, Kazi Raghib Ashab, Takahiro Kuba, Hadi M. Marwani, Abdullah M. Asiri, Md. Munjur Hasan, Aminul Islam, Mohammed M. Rahman, Md. Rabiul Awual
    • 雑誌名

      Journal of Environmental Management

      巻: 353 ページ: 120206 1-12

    • DOI

      10.1016/j.jenvman.2024.120206

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Simultaneous toxic Cd(II) and Pb(II) encapsulation from contaminated water using Mg/Al-LDH composite materials2023

    • 著者名/発表者名
      Md.TofazzalHossain, ShahjalalKhandaker, M Mahbubul Bashar, Aminul Islam, Minhaz Ahmed, Rabeya Akter, Abdulmohsen K.D. Alsukaibi, Md. Munjur Hasan, Hamed M. Alshammari, TakahiroKuba, Md. RabiulAwualhj
    • 雑誌名

      Journal of Molecular Liquids

      巻: 368 ページ: 120810-120822

    • DOI

      10.1016/j.molliq.2022.120810

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] Cs吸着能の向上のための大気圧非平衡プラズマ処理条件についての実験的検討2024

    • 著者名/発表者名
      紙永大輔・頼雨桐・久場隆広・藤林恵・Shahjalal Khandaker
    • 学会等名
      令和5年度 土木学会西部支部研究発表会
  • [備考] 都市環境工学研究室

    • URL

      https://toshikankyoukougaku.amebaownd.com/

URL: 

公開日: 2024-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi