研究課題/領域番号 |
21F21407
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
新留 琢郎 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (20264210)
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研究分担者 |
ISLAM WALIUL 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2021-11-18 – 2024-03-31
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キーワード | ホウ素中性子捕捉療法 / ホウ素 / 解糖系 / EPR効果 / 小胞体ストレス / ミトコンドリアストレス |
研究実績の概要 |
ホウ素中性子捕捉療法は、ホウ素10に中性子を照射するとα粒子が生成し、それによりがん細胞を傷害する手法である。しかし、10Bを腫瘍選 択的に送達することが難しく、正常細胞も傷害してしまうという副作用が懸念される。そこでこの問題を解決するために、グルコサミンおよび ホウ酸10を修飾したスチレン-co-マレイン酸コポリマーナノ粒子(SGB複合体)を作製し、EPR効果に基づいた腫瘍選択的なデリバリーシステムを開発した。SGB複合体は効果的な抗がん作用を示したが、このSGB複合体の詳細な化学構造やがん細胞傷害のメカニズムについてはまだわからないことが多い。そこで本研究では、SGB複合体の抗がん活性についての基礎的な評価に加え、ヒトのがんに近い腫瘍モデルマウスを用いて、具体的な臨床応用を想定したデータを取得することを目的としている。 初年度は、SGB複合体の詳細な化学構造を調べるために、紫外可視および赤外吸収スペクトル測定、高分解能NMR測定、液体クロマトグラフィー質量分析を行った。その結果、グルコサミンの-NH2基がSMAポリマーの-COOH基にアミド結合で結合し、ホウ酸の-OH基がグルコサミンの-OH基にジオール結合で結合していることを確認した。 次に、SGB複合体をがん由来培養細胞であるHeLaおよびC26細胞作用させた。その結果、小胞体ストレスマーカーであるリン酸化elF2やC/-EBP homologous proteinの増加が認められ、明らかな小胞体ストレスが観察された。 以上のように、SGB複合体の化学構造を明らかにし、細胞レベルでの作用機序について小胞体ストレスとの関わりを明らかにできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画の通りに進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
SGB複合体のグルコサミンががん細胞の解糖系を阻害し、がん細胞を障害できるかを評価する。まず培養細胞(HeLa 細胞やC26細胞)を対象に、液体クロマトグラフィー質量分析法により解糖系の代謝物の増減を測定する。そして、グルコーストランスポーターや解糖系酵素へ及ぼす影響も調べ、解糖系との関連を明らかにする。さらに、ミトコンドリアに与えるストレスを評価し、SGB複合体の細胞に対する影響を総合的に解析する。 これらと並行して、SGB複合体によるマクロファージの活性化を評価し、免疫系との関連を明らかにする。また、いくつかの種類のがんモデルマウスを作製し、そこへSGB複合体を投与することによる抗がん効果を評価する。そして、中性子を照射することによる中性子捕捉療法や光照射により抗がん効果を増強する光線力学療法に適用できるか評価していきたい。
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