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2023 年度 実施状況報告書

ユーラシアを渡り歩く文学たちーコーカサスにおけるアルメニア・ジョージア普遍主義

研究課題

研究課題/領域番号 22KF0324
配分区分基金
研究機関東京都立大学

研究代表者

前田 弘毅  東京都立大学, 人文科学研究科, 教授 (90374701)

研究分担者 MACFARLANE ALEXANDRA  東京都立大学, 人文科学研究科, 外国人特別研究員
研究期間 (年度) 2023-03-08 – 2025-03-31
キーワードコーカサス / ユーラシア / 写本 / アレクサンドロス物語 / アラビアン・ナイト
研究実績の概要

研究2年目は、中央ユーラシア地域に関する大部な文化事典への編集および11項目のジョージア/グルジア関連原稿執筆やコーカサス研究で権威ある英文雑誌への論文の寄稿など大きな成果を挙げることができた。
前者についてはコーカサスの歴史と文学について最新の研究を参照した成果である。後者についても、アラビアン・ナイトの一部としても知られる真鍮の都に挿入されたアレクサンドロス・ロマンスのテキストを読み解くことで中世アルメニア文学の汎ユーラシア性を実証しており、コーカサス文学研究と歴史研究の視点を複合的に組み合わせる本科研の重要な研究成果である。
このほか、境界をこえる写本たちと題する研究集会では、ジョージアにおいてジョージア文字で記されたアルメニア語写本についてそれぞれ報告とコメントを行った。これもユーラシアという大きなマクロコスモスにおける様々なミクロコスモスの交差するコーカサスの複雑性を象徴する共同研究の成果である。この研究集会では、さらに、アルメニア人やジョージア人の研究者からも様々な示唆を得ることができた。また、中世から近世、近代に至るジョージア/グルジアやアルメニアの文学伝統について、新たな知見を共有した。
今後もジョージア語とアルメニア語、さらには周辺の大きな文明圏の言語によって記された様々な歴史的文学について共同ないし個別に研究を進めていく。
また、日本学術振興会の招きにより、山梨県の高校で講演を行うなど、研究成果の一般社会への還元にも努めた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

共同研究2年目にはそれぞれの研究を進める一方で、アルメニア人研究者を迎えた国際的な研究集会に参加して、報告とコメントを行うなど、共同の研究成果を得ることができた。文学と歴史研究というディシプリンの違いを乗り越えて、コーカサス地域およびジョージア/グルジア、アルメニア語世界の汎ユーラシア性について、論じ会う機会を多く得た。このように本研究は順調に進展していると考えられる。

今後の研究の推進方策

共同研究の残された期間は半年であるが、それぞれの研究成果の確保に努めると同時に、相互の研究を参照して今後の共同研究につながるよう議論を重ねていく。すでにカザフスタンやベルギーにおける国際学会へのエントリーや、ジョージア・アルメニアにおける史料調査の予定も立っており、共同研究によって発展した文学・歴史研究の乗り入れによるコーカサス地域の汎ユーラシア性について、さらに国内外の研究者との将来の共同研究の進展を促すような研究成果の公刊に努める。日本国内の研究コミュニティとの接続についても一層留意して、日本内外における複合的なコーカサス研究のさきがけとなるべく、日本語だけではなく、英文での国際的且つ学際的な研究成果の還元に共同で努めていく。また、共同研究終了後も継続して議論を続けていくような枠組みの整備もまた構想していく必要がある。

次年度使用額が生じた理由

基金化によりより効率的かつ的確な支出が見込めるようになった。2023年度に続けて、2024年度も海外での研究発表を行う予定である。特にカザフスタンやベルギーにおける研究報告やアルメニア・ジョージア等での現地調査も計画している。このほか、研究成果の公刊等についても必要な支出を見込んでいる。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 5件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] “The City of Brass and Alexander’s Narrow Grave: Translation and Commentary of Kafas added to Manuscript M7709 (Part 3)”2023

    • 著者名/発表者名
      Alex MacFarlane
    • 雑誌名

      Iran and the Caucasus

      巻: 27 ページ: 249-264

    • DOI

      10.1163/1573384X-02703002

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] Slave Soldiers Who Cannot Understand the ”Iranian Ways“?: The Cases of the Safavid Gholams2024

    • 著者名/発表者名
      Hirotake Maeda
    • 学会等名
      International Workshop Military Elites in the Early Modern Islamicate World and Beyond
    • 招待講演
  • [学会発表] “Medieval Armenia and Georgia”2024

    • 著者名/発表者名
      Alex MacFarlane
    • 学会等名
      JSPS Science Dialogue, at Yamanashi Prefectural Tsuru High School (school lecture)
    • 招待講演
  • [学会発表] “Copying Death in Akhalgor: The Armenian City of Brass in the 17th Century”2024

    • 著者名/発表者名
      Alex MacFarlane
    • 学会等名
      “Manuscripts Crossing Borders: Transcription, Translation and Transference of Manuscripts in/beyond the Caucasus”
    • 招待講演
  • [学会発表] サファヴィー帝国の「奴隷軍人」にみる帝国と辺境―バラタシュヴィリ家のサガ―2023

    • 著者名/発表者名
      前田弘毅
    • 学会等名
      オンラインシンポジウム「武人×帝国×ユーラシア─統合と包摂のダイナミズム─」
    • 招待講演
  • [学会発表] “Reading Medieval Stories between Europe and Asia”2023

    • 著者名/発表者名
      Alex MacFarlane
    • 学会等名
      Tokyo Humanities Cafe 13 (public event)
    • 招待講演
  • [図書] 『中央ユーラシア文化事典』(編集及び「ジョージア/グルジア」「近世カトリック宣教団」「ルスタヴェリ」「トビリシ(ティフリス)」「奴隷交易(コーカサス)」「アルメニア商人」「ジョージア/グルジア語」「ジョージア/グルジア文学」「ムツヘタ」「ジョージア/グルジア人」「ブロッセ」項目執筆)2023

    • 著者名/発表者名
      小松久男(編者代表)梅村坦、坂井弘紀、林俊雄、前田弘毅、松田孝一(編者)
    • 総ページ数
      777
    • 出版者
      丸善出版
    • ISBN
      9784621308066

URL: 

公開日: 2024-12-25  

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