本研究は組み立て構造物(鉄骨とPC構造)の接合部に着目し、大地震の際の接合部の応答予測手法の開発を主目的としている。国内外に構造接合部に関する研究は少なくないが、殆どが実験モデル、実構造物の特定記録のみ、そして建設初期パラメータによる仮想条件のもとで行われ、実構造物の地震経歴や経年劣化を考慮に入れていない。本研究は長期間の実地震記録を用い解析モデルを作成しそして実地震記録によってパラメータを修正し、上記の問題解決を試みる。研究期間中に次のような成果が得られた。 1、FEMによる実構造物(東北工業大学10号館、制振組み立て構造物)の解析用構造モデルを作成し、いくつかの実地震記録を用いて構造パラメータを同定した。特に同構造物の一部の接合部には制振装置(オイルダンパー)及び免震装置が設置されているため、パラメータの同定に時間を要した。 2、作成した解析モデルの詳細なパラメータ設定を変え、実測した震度4以上の12の地震波(2022年3月16日起きた大地震を含む)を入力し、得られた応答と実測値を比較して最大誤差が50%ほどに留まり、かなり精度の良い解析モデルと言えよう。 3、上記の解析モデルを用いて2022年3月16日仙台で起きた大地震時の応答を解析してみたところほぼ実記録と一致の値が得られたが、やはり誤差が存在する。その誤差が計算プログラムによるものかそれとも建物の重さの変化によるものかについて明確になっていない。そこでその原因についても検討し、誤差を評価する方法を提案した。 4、誤差を評価する3種類の評価式を提案し各々の評価式の特徴及び適用範囲を地震特徴と対照しながら精査し、適用範囲を提案した。 期間中の研究成果を日本建築学会大会等で口頭発表4編、国際会議1編、SCI(DOI)付きの国際論文集に公表した。これからは1編以上の国際誌論文を公表する予定である。
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