研究課題/領域番号 |
22F21707
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 桜美林大学 |
研究代表者 |
雷 桂林 桜美林大学, グローバル・コミュニケーション学群, 准教授 (70550896)
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研究分担者 |
LIU JUE 桜美林大学, グローバル・コミュニケーション学群, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2022-07-27 – 2024-03-31
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キーワード | オンライ授業 / 対面授業 / 日本語教育 / やさしい日本語 / 学習効果 / 授業の効率 / 学生の主体性 / 日本語能力試験 |
研究実績の概要 |
本研究では、インターネット上のソースを活用しつつ、東京都内の2大学と日本語学校1校を対象に、授業の効果について現地調査を行った。 (1)コロナ流行期のオンライン授業の実施方法とその教育効果について検証した。新型コロナウィルスの流行は、伝統的な教育スタイルに厳しい挑戦をもたらした反面、インターネット技術を基盤にした多くの教授方法をも生み出している。現在、大学や日本語学校では、対面教育と同時に、遠隔教育を常態化させようとする動きが見られる。本研究は、「オンライン授業」は①「対面授業とどのような差異があるか」、②「教育効果にどのような違いがあるか」、③「語学教育に用いる際に不適切なところがあるか」という三つの点に焦点を当てる。これらの調査は、ポスト・コロナの日本語教育方法に大きな示唆を与えることが期待できる。特に、中国人向けの日本語教育案を作成する際に、参考になると考える。 (2)オンライン授業の効果と対面教育の効果を比較するために、1名の学生の日本語学習プロセスを4ヶ月にわたって追跡調査研究を行った。ゼロから勉強しはじめる学習者であるため、入門段階と初級段階の学習状況が観察できた。「ステップ1:オンライン授業を受講させ、効果を検証」「ステップ2:復習をさせ、不明点をメモにまとめてもらう」「ステップ3:同じ内容を対面授業で指導し、効果を検証」。特に、不明点の回答についてショートカットの解説動画と対面解説という二つの案を作成して、その効果を検証してみた。このような近距離の追跡調査は学習プロセスの細かい点を把握できるため、日本語学習者の立場から教育案を作成するのに有意義な視点だと考えられる。特に、学生のニーズに合わせたオンライン授業作りに示唆を与えることが期待できよう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、オンライン授業の実現ルートと実施方法を解明することを目標とする。今年度は、次の問題をめぐって、現地調査や仮テストを行い、一定の効果が見られたが、更なる検証を必要とすると考える。 (1)オンライン授業の実施方法や、対面授業との区別について。コロナ流行期のオンライン授業は対面教室での風景を最大限に復元させようとする傾向が強く、バーチャル教室を採用するケースが多い。殆どの授業は従来の進め方で支障なく進めることができるが、海外の大学生向けのライブ授業は、時差の関係で、夜遅くまで続く場合があるため、教師からの苦情が寄せられる。またコロナに感染した教師と学生から困難さが訴えられる。オンライン授業は、いかに地域間の隔たりの問題を克服し、如何に便利さを最大限に生かすかをさらに検討する必要がある。 (2)日本語学校の初心者コースはレベルのバラツキがある。入門段階の勉強が長引いて、なかなか身につけることができず、N3に合格できないケースが珍しくない。もっと能率的な教育法が期待される。 以上2点を踏まえて、本研究は、「ショートカット」を用いたオンライン授業と「やさしい日本語」の仕組みを取り組んだ授業を日本語教育に導入する仮想を考案し、次の仮テストを行った。(1)中国人向けの「言葉のやさしい覚え方」の案を作成し、『言葉の音便と複合』という動画を録画した。動画を『聯普社区』というウィチャットサイドで公開し、1000人近くの中国人学習者を受講させた。(2)中国人向けの「日本語のやさしい勉強法」の教材を作成し、一人の学生に3ヶ月ほど日本語を教え、N2に合格させた。当該学生はその後、中国『人民中国杯・国際日本語作文コンテスト』で一等賞を獲得した。 上記仮想は一定の効果が得られたが、果たして大規模の教育に同様の効果が得られるか、次年度100人ほどの大学生を対象に検証を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は今後二つの点に焦点を当てて行う予定である。一つ目は、オンライン授業の実施方法についてである。日中のオンライン授業についての文献を整理し、先行研究をまとめる。一方、語学教育現場に入って、現地調査を行い、コロナ流行期におけるオンライン授業の実行方法や授業体験を引き続き調査する。二つ目は、「オンライン授業と対面授業との共通点と相違点」「ポスト・コロナ時代おけるオンライン授業の位置づけ」「語学教育におけるオンライン授業の理想像」等について検討を行う。 研究方法としては、語学教育におけるオンライン授業と対面授業の教育効果の実証を行う。実証内容は『基礎中国語』『基礎日本語』コース、実証対象は桜美林大学や広東工業大学学生、受験者数は計100人の予定である。 研究手順は、5つのステップに沿って行う。(ア)事前準備として、中国人日本語学習者に向けた「やさしい日本語」や日本人中国語学習者に向けた「やさしい中国語」の作成案を検討し、電子版基礎テキストを編集する。(イ)対面授業を行う。その後、語学能力テストを受けさせ、アンケートやインタビューを行い、データを分析する。(ウ)オンライン授業のプラットフォームを立ち上げ、同内容の授業をオンラインで行う。その後、語学能力テストを受けさせ、アンケートやインタビューを行い、データを分析する。(エ)オンライン授業と対面授業から高く評価された部分を取り上げ、両手法を利用した授業を行う。その後、語学能力テストを受けさせ、アンケートやインタビューを行い、データを分析する。(オ)実験のデータ分析を行い、異なる授業の体験や学習評価及びそれぞれの利点と改善点を報告書にまとめ、ポスト・コロナ時代の語学教育に提案を作成する。 なお、日本や中国の学会や学術フォーラムに参加して研究者と意見交換を行い、調査データや研究資料を整理し、研究レポートの作成などを行う予定である。
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