研究課題/領域番号 |
22F22386
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
柚崎 通介 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (40365226)
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研究分担者 |
DILINA TUERDE 慶應義塾大学, 医学部, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2022-11-16 – 2025-03-31
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キーワード | ドーパミン / シナプス / 側坐核 / 背側被蓋野 |
研究実績の概要 |
ドーパミンは、認知・意思・行動に影響を及ぼす神経調節物質である。グルタミン酸やGABAなどの古典的な神経伝達物質は、シナプス小胞や神経伝達物質受容体が集積する「シナプス」を基点として情報伝達が行われる。一方、ドーパミンを含む小胞やドーパミン受容体は集積せず、容量伝達により情報伝達が行われると考えられてきた。しかし、私たちはドーパミン作動性神経線維は、ドーパミン受容体を発現する神経細胞との間に非シナプス性接着構造を形成することを見いだした。本研究では中脳辺縁系経路に焦点を当て、腹側被蓋野(VTA)のドーパミン作動性神経線維と側坐核(NAc)との間に形成される非シナプス性接着構造の分子実体とその機能的意義の解明を目指した。本研究成果は、統合失調症・パーキンソン病・自閉スペクトラム症などの精神神経疾患の理解を進めて、新たな診断・治療手段の開発につながる可能性がある。 具体的には、NAcとVTAのそれぞれにN末側半分とC末側半分に分割した緑色蛍光タンパク質(GFP)をグリコシルホスファチジルイノシトールによってそれぞれの神経細胞膜上に発現させることによって、VTA軸索とNAcが物理的に近接する部位で再構成されたGFP蛍光によって可視化する技術(GRAPHIC)を用いることによって、以下の3つの目標を達成する。まず、VTA軸索とNAcが近接する部位を明らかにする。次にこれらの近接部位に局在する分子群を同定する。最後に、シナプスと非シナプスの接触部位がどのようにドパミン作動性機能を制御しているのかを明らかにする。 本年度はドーパミン作動性ニューロンにおいてCreリコンビナーゼを発現する遺伝子改変マウスに対して、アデノ随伴ウイルス(AAV)を感染させることによって、VTA-NAcの近接部位をGFP蛍光で可視化することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り、ドーパミン作動性ニューロンにおいてCreリコンビナーゼを発現する遺伝子改変マウスに対して、アデノ随伴ウイルス(AAV)を感染させることによって、VTA-NAcの近接部位をGFP蛍光で可視化することに成功した。この技術を用いることによって、ドーパミン作動性軸索に沿ったシナプスおよび非ナプスの接触部位の特徴や、これらの接触部位に関与する分子群の同定が可能になることが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
VTA由来のドーパミン軸索とNAcの中型有棘神経細胞の間にはGFP蛍光で可視化される接着部位が存在した。この存在部位について免疫組織化学染色後に超解像顕微鏡観察を行うことによって、ドーパミン受容体やGABA受容体等のシナプス後部分子や、シナプス小胞分子や小胞放出分子群との位置関係を明らかにする。また接着部位の実体については再構成されたGFPに対する抗体を用いた免疫電子顕微鏡法によって明らかにする。近接部位に局在する分子群の機能的意義については、代表的な分子に対してノックダウンすることによって明らかにする。
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