研究実績の概要 |
複数メーカーの使用済みリチウムイオン電池を入手し、電池を放電後に解体してリサイクル研究に利用した。構成部材ごとに分別し、ジメチルカーボネートで洗浄、洗浄液は電解液のリサイクル研究用に、部材はそれぞれの部材へのリサイクル用に保管した。 次に、リチウムイオンの主要な負極材である黒鉛に注目し、低環境負荷のリサイクルを検討した。酢酸処理(3 M, 50 ℃, 1 h)、KOH水溶液処理(7 M, 常温, 24 h)、N2ガス中加熱処理(800 ℃, 1 h)を実施、高分子バインダーを分解して黒鉛粉末を銅箔集電体から分離・回収した。カーボンナノチューブ(CNT)を三次元集電体とした黒鉛-CNT負極を作製し、Li箔を対極とした半電池試験によりその負極性能を評価した。未処理の回収黒鉛では150サイクル後の脱リチオ化容量が120 mAh/gと小さいものの、酢酸処理、KOH水溶液処理、N2ガス中加熱処理をした再生黒鉛は328, 325, 338 mAh/gと高く、新品の黒鉛の345 mAh/gに近い性能を示した。さらに酢酸処理黒鉛を用い、LiNixCoyMnzO2 (NCM)正極を対極としたフルセルも作製、200サイクル後に容量104 mAh/gNCM、クーロン効率99.8%、容量維持率67.3%を得た。加えてライフサイクルアセスメント(LCA)で再生処理の温室効果ガス排出を評価、実験手法を1 kg/batchにスケールアップした場合、10.9-37.1 kgCO2/kg黒鉛の結果を得た。 また、LiNixMnyAlzO2 (NCA)正極の再生も検討した。Al箔集電体ごと正極を電気化学的に処理し、有用金属元素の溶出・回収と、Al箔の回収を目指した。H型セルを用い、使用済み正極を作用極に、黒鉛電極を対極に、両極性イオン交換膜を隔膜に用い、硫酸水溶液中で溶出条件を検討し、条件の最適化を行っている。
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