研究課題
現代社会における価値観はますます重要な要素となっている。経済発展が個人の自由と自律性を重視する物質主義的価値観から脱物質主義的価値観への文化的転換と密接に関連し、工業化された社会では価値志向が似通ったものになると考えられる。価値観の変化のプロセスは、政治領域や選挙過程において顕著な影響を及ぼしている。シーモア・リプセットとスタイン・ロッカン(1967)によって概念化された伝統的な社会的亀裂は、少なくとも部分的には、一方のグリーン、オルタナティヴ、リバタリアン(GAL)と、他方の伝統主義、権威主義、ナショナリズム(TAN)との競争を軸に構成された新たな対立軸に取って代わられていると言われている。この意味において、価値観の変化が政党システムの再編成を引き起こしていると考えることができ、政治的対立や政党間の競争は、物質的な問題に焦点を当てるのではなく、アイデンティティや社会文化的な問題を中心に据えるようになったことを念頭に置いて研究を進めた。本共同研究では、受入研究者がリプセット-ロッカン理論を踏まえて、今日的な社会的対立軸に発展することを理論的に検討し、外国人特別研究員のBolzonaro氏が、様々な現代的なテーマに適用する形で進めた。妊娠中絶、不妊治療、同性婚の3つのテーマに焦点を絞り、それぞれのテーマに対する人々の反応や法制度の整備の展開を比較するという人々の価値観と政策形成の連関に光を当てた意義深い試みである。歴史的発展経路や文化的な土壌が異なる欧州諸国と日本の比較は、異なる事例を比較し共通のパターンを抽出するMDSD(Most Different Systems Design)を採用しており、近代化の経路が異なる国々から発露される新たな価値観や道徳政治の展開の共通枠組を抽出する上で有効であった。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
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