研究課題/領域番号 |
22F21735
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立民族学博物館 |
受入研究者 |
小野 林太郎 国立民族学博物館, 学術資源研究開発センター, 准教授 (40462204)
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外国人特別研究員 |
BOULANGER CLARA 国立民族学博物館, 学術資源研究開発センター, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2022-07-27 – 2024-03-31
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キーワード | 魚類遺存体 / 同位体分析 / タンパク質分析 / 琉球列島 / ウォーレシア / オセアニア / 海洋適応 / 漁撈復元 |
研究実績の概要 |
本年度はまず亜熱帯圏に位置する琉球列島の先史時代遺跡群を対象に、複数の遺跡から出土した魚類遺存体の再同定と、さらなる分析として同位体分析やタンパク質分析を行える可能性のある資料の抽出を試みた。これらの作業は沖縄県埋蔵文化財センターにて、当センターからのご協力のもと、実施することができた。 また琉球列島週殿魚類遺存体資料のみでなく、比較の視点として東南アジアのウォーレシア海域に位置する島々から出土した更新世および完新世前期に遡る魚類遺存体のほか、オセアニアの島々で出土した遺跡産魚類も対象とし、その同位体分析とタンパク質分析のための準備作業を行った。 さらに同位体分析に関しては、琉球列島、東南アジア、オセアニアより出土した遺跡産魚類よりサンプリングを行い、京都の総合地球環境学研究所の協力のもと分析を開始した。これらの最終的な成果が出るのは次年度となるが、コラーゲンの残りはよく、過去における人類による漁撈活動と漁撈環境の復元を進める上で良好な状態と認識している。タンパク質分析に関しても、奈良女子大との協力のもと、当大学のラボにてサンプリングと同定分析を進め、こちらも良好な結果が出ており、現生標本から得られている同定結果と照らし合わせつつ、さらなる分析を進めている段階である。 これらの作業と並行し、本年度までの研究成果の一部は、積極的に国内外の学会や研究会にて発表したほか、複数の国際学術誌に投稿・公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
まず分析対象となる資料については、琉球列島、東南アジア、オセアニアのいずれの地域からも重要な先史遺跡群より出土した魚類遺存体を提供してもらえ、当初の予想以上のサンプル数を確保できたことがあげられる。同じく日本国内での同位体分析やタンパク質分析も大きな支障なく開始できた上、いずれの分析結果も現時点ではかなり良好である点を指摘できる。タンパク質分析においては、日本における研究はまだ萌芽的な段階と認識しているが、今後は研究がかなり進んでいる欧米圏の大学や研究機関との共同研究の検討も進んでおり、国際的かつ学際的な研究が展開できる可能性がある点も含め、計画以上の進展があったと評価した。
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今後の研究の推進方策 |
すでに指摘したように、琉球列島、東南アジア、オセアニアのいずれの地域で出土した魚類遺存体も、同位体分析やタンパク質分析を行う上で良好な状態であるため、次年度も継続してその分析を積極的に進める計画である。また同じく先述したように、タンパク質分析においては、日本における研究はまだ萌芽的な段階でもあるため、さらに精度の高い分析を実施する上で、研究がかなり進んでいる欧米圏の大学や研究機関との共同研究も計画している。具体的には、遺跡産魚類のタンパク質分析で世界をリードしているイギリスのマンチェスター大学との共同研究を計画中である。またサンプリングの数や質がかなり良好であることから、次年度はさらに積極的に国内外での研究発表や論文発表を計画している。
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