研究課題/領域番号 |
21F21322
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
辻井 直人 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 主幹研究員 (90354365)
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研究分担者 |
VALENTA JAROSLAV 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2021-09-28 – 2024-03-31
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キーワード | d電子系 / f電子系 / 圧力 / 希土類化合物 / 磁性 |
研究実績の概要 |
d電子系の遍歴電子磁性とf電子系の価数不安定性が共存する場合に生じる非常に特異な磁性の変化を詳細に調べている。これまでに、YbCo2という新たな物質系において、ゼロ磁場での異常に大きい電子比熱係数を観測し、さらに磁場誘起相転移が生じることを見出した。この磁場誘起相転移の背景となる結晶場準位についても解析を行った。さらに電子状態についてX線分光等により、Ybが非常に3価に近いことを確かめ、それによって磁化データからYbの寄与を分離した。それにより、Coイオンも遍歴電子由来の磁気モーメントを担っていることが判明した。その結果、磁場誘起相転移の起源として、2つの可能性があることが明らかになった。一つはCoの遍歴電子メタ磁性によるもので、もう一つは4f電子の結晶場準位が磁場によってクロスオーバーする際に生じる擬二重項の四重極秩序である。この結果について論文を投稿し、Journal of Physics: Condensed Matterから出版された。 圧力下物性測定はYbの価数を3価に近づけるとともにd電子の磁性を弱める効果があるため、d+f電子系の磁性の起源を明らかにするうえで有効である。圧力セルを用いた電気抵抗測定を進めている。さらにカレル大学への出張で、高圧物性測定を行った。また、YbMn2Sb2の単結晶を作製し、高圧物性測定を行っている。この物質においては、圧力誘起相転移を起こすことがこれまでの測定で判明した。このとき、Ybの価数が大きく変化している可能性があり、注目に値する。 また、本実験の過程で新たな圧力誘起超伝導体(Tc~3 K)が見出された。この結果についても論文投稿準備中である。これらの圧力下測定については、すでに得られているデータをもとに現在、解析を進め、測定条件へフィードバックしていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高圧測定において、クランプ式圧力セルを用いた物性測定が順調に進んでおり、YbMn2Sb2の圧力下測定や、新しい圧力誘起超伝導の発見など特筆すべき成果が得られつつある。論文もJ. Phys.: Condensed Matt.やJ. Phys. Soc. Japanなどから出版されている。より高い圧力での測定のためのブリッジマン式セルでは測定の不具合が生じており、YbCo2の磁気相転移を解明するに足るデータを得るにはさらなる検討が必要である。次年度に測定条件の改善を進め、良質のデータを取得できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
YbCo2の圧力下物性測定について、引き続き圧力セルの整備を行って低温高圧実験を進めていく。同時に、より低温での磁気秩序発現の可能性について、様々な物性測定から検討を進める。YbMn2Sb2について、興味深い圧力誘起相転移が見出されているため、この詳細を明らかにしていく。さらにYbMn2Sb2に関して、圧力下での電子状態の変化を調べるため、ダイヤモンドアンビルセルを用いた放射光X線分光を行う予定である。
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