研究実績の概要 |
免疫チェックポイント低分子阻害剤として、カルボキシル基をもつ(4R)-1-[[5-chloro-2-[(3-cyanophenyl)methoxy]-4-[[3-(2,3-dihydro-1,4-benzodioxin-6-yl)-2-methylphenyl]methoxy]phenyl]methyl]-4-hydroxy-D-proline (BMS1166)をもとに、1)これにビニル基やエポキシ基を導入して重合すること、2)これを金ナノ粒子に固定化すること、3)これをポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマーへ固定化することなどを行い、PD-1/PD-L1相互作用の阻害活性を調べた。 1)高分子化のためにビニル基やエポキシ基を導入したBMS1166モノマーの合成には成功した。しかし、前者では十分な高分子化による阻害活性への効果が得られず、後者では重合が進行しなかった。 2)金ナノ粒子への固定化は、まずチオール基とアミノ基をもつポリエチレングリコール(PEG)で修飾した後に行った。導入量は金ナノ粒子上に残存するアミノ基の量から定量した。しかしながら、BMS1166の固定化量にかかわらず、PD-L1への十分な結合性は観測されなかった。 3)PAMAMデンドリマーには、第6世代型の 256 個のアミノ基をもつものを用い、これに直接固定化するとともにPEGスペーサーを介した固定化も行った。PEGスペーサーを導入すると、高い阻害活性が増強された。 本研究では、BMS1166の多価化を行うことができたが、化学修飾や固定化担体による立体障害のためにPD-L1との相互作用が低下することも観測された。低分子阻害剤の種類によって多価化の効果が異なることが明らかになってきた。今後は、低分子化合物の選択や修飾法も含めた多価化の検討が必要になると考えられる。
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