研究課題/領域番号 |
22F21404
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
吉田 稔 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, グループディレクター (80191617)
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研究分担者 |
NURMILA SARI 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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キーワード | ミトコンドリア病 / 解糖系 / TLAM / iPS細胞 |
研究実績の概要 |
異なる遺伝子変異を有する疾患iPS細胞を用いた細胞表現型の検証を行った。ミトコンドリア病で最も重篤な類型であるLeigh脳症の原因遺伝子変異(Ndufs4 KO)を導入した疾患iPS細胞をゲノム編集で作製した。また、Leigh脳症患者由来線維芽細胞より誘導した疾患iPS細胞2株(m.8993 T>G100%, m.8993 T>C100%)も作製した。これらと野生型(健常者由来)iPS細胞から線維芽細胞へ分化誘導を行い、解糖系阻害剤投与によるミトコンドリア呼吸能への影響を評価した。我々が同定したPFK1新規阻害剤TLAMもしくはLDH阻害作用のある乳酸のいずれかの添加により、疾患iPS細胞と健常者iPS細胞に由来する線維芽細胞において、ミトコンドリア呼吸能が向上した。神経幹細胞にも分化誘導して行った同様の検討においても、解糖系阻害により呼吸能が向上した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の主要な目的である、異なる原因遺伝子を保有するミトコンドリア病iPS細胞を確立した上で、解糖系阻害によりミトコンドリア機能を改善するか検証することを、おおむね達成することができた。異なる疾患原因遺伝子を持つ細胞においても解糖系阻害によりミトコンドリア機能が改善することをこれまでの検討から示した。一方で、使用した解糖系阻害剤の2つで改善効果の程度が異なる細胞もあったが、その理由は今のところ不明である。ミトコンドリア機能改善に寄与する詳細な分子機構はまだ解明されていない。
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今後の研究の推進方策 |
異なる遺伝子変異を有する疾患iPS細胞を用いて解糖系阻害による神経表現型への影響を評価する。上記したiPS細胞について、神経幹細胞と神経細胞へぞれぞれ分化誘導を行う。その際に野生型株と比較して分化能が障害されるかどうかを確認するため、それぞれ神経幹細胞マーカーと神経細胞マーカーによる蛍光抗体染色を用いて評価する。神経幹細胞障害を認めた株において、TLAM等の解糖系阻害剤投与で改善がみられるか検討する。回復できた場合、その際のミトコンドリア膜電位、ミトコンドリア形態の変化の有無をJC1、ミトトラッカーを用いて評価する。 異なる遺伝子変異を有する患者由来iPS細胞での解糖系活性化の検証をする。上記iPS細胞から分化させた神経幹細胞と線維芽細胞を用いて、遺伝子変異による解糖系の活性化とミトコンドリア呼吸能の低下が見られるかどうかを、細胞外フラックスアナライザーを用いて調べる。解糖系活性化が見られた細胞株、細胞種においては、解糖系制御の全10ステップに関わる酵素発現をRNA(定量性PCR)、タンパク質(イムノブロット)の双方を用いて評価する。解糖系活性化もしくはミトコンドリア呼吸障害が見られた株において、TLAM等の解糖系阻害剤投与で改善がみられるか検討する。 異なる遺伝子変異を有する患者由来iPS細胞での代謝物変化の検証をする。上記の検討において病態特異的なエネルギー代謝変化と、解糖系阻害剤による病態表現型の改善があわせて見られた細胞株において、メタボローム解析を行う。メタボロームでは解糖系代謝物群に加えて、TCAサイクル、ペントースリン酸経路の代謝物群や、NADPH等の酸化還元反応の補酵素も定量解析する。
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