ミトコンドリア病で最も重篤な類型であるLeigh脳症の原因遺伝子変異(Ndufs4 KO)を導入した疾患iPS細胞をゲノム編集で作製した。Ndufs4 KO iPS細胞から分化誘導した線維芽細胞において、TLAM投与がミトコンドリア呼吸を向上することを細胞外フラックスアナライザーで確認した。神経幹細胞に分化誘導した際も同様の呼吸の向上がみられた。Ndufs4 KO神経幹細胞では、野生型に比べてミトコンドリアネットワークが長くなり、分岐が複雑化した。TLAMの投与により、ミトコンドリアネットワークが野生型細胞の表現型に近づいた。神経幹細胞を神経細胞に分化させると、Ndufs4 KO神経幹細胞では多くの細胞で細胞死が生じた。TLAMを加えると、細胞死は起こらず、正常神経幹細胞と同等に神経細胞に分化した。また、ミトコンドリア病の症状を呈するNdufs4 KOマウスの寿命がTLAM投与により延長し、運動協調性も改善した。メタボローム解析によりTLAMが糖の流れを解糖系からペントースリン酸経路に変えることが示された。以上から、TLAM投与は解糖系酵素PFK1を阻害することでミトコンドリアの機能改善につながることが示唆される。
|