研究課題/領域番号 |
22F22718
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
菊地 淳 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, チームリーダー (00321753)
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研究分担者 |
BEI KE 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2022-09-28 – 2025-03-31
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キーワード | 富栄養化 / ブルーム予測 / 環境要因解析 / 機械学習 |
研究実績の概要 |
プラネタリーバウンダリー(地球環境資源の限界指標)の9項目において、生物多様性の低下と窒素・リン起源による富栄養化が警鐘されているように、中国のような大陸国家では湖沼の富栄養化と生態系破壊が深刻である。本課題では肥料の河川流入や養殖排水、ならびに沿岸の都市化でアオコ被害が20年来続出している太湖に環境モニタリングサイトを設置し、環境情報と定期的にサンプリングした湖水の水分析データとを統合化し、アオコ被害の事前予測法を開発する。さらに生態モニタリング情報から、増殖した植物プランクトンを摂食する動物プランクトン、さらには魚類へと生食連鎖が駆動する鍵因子特定を目指す。 当該年度はデータ帰属等に問題が起こらない、温州大学自身で取得したサンプリング水の時系列データ解析を中心に遂行した。アオコを中心とする植物プランクトン増殖を反映するクロロフィルa濃度は、2021-2023年までの採水データを時系列解析すると、特に2022年の秋期に顕著な増大傾向が見られた。このプランクトン増殖と同期するように、炭素、窒素およびリン濃度は2022年度秋期に顕著な増大傾向があり、つまりプランクトン増殖を特徴付ける指標マーカーとなることが想定される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度はデータ帰属等に問題が起こらない、温州大学自身で取得したサンプリング水の時系列データ解析を中心に遂行した。アオコを中心とする植物プランクトン増殖を反映するクロロフィルa濃度は、2021-2023年までの採水データを時系列解析すると、特に2022年の秋期に顕著な増大傾向が見られた。このプランクトン増殖と同期するように、炭素、窒素およびリン濃度は2022年度秋期に顕著な増大傾向があり、つまりプランクトン増殖を特徴付ける指標マーカーとなることが想定される。 理研にて取得した各種機械学習の解析手法(例えばRandom Forest, Recursive Feature Elimination, Lasso regression)のいずれも、TOC(全有機性炭素)、TN(全窒素)、TP(全リン)、DTN(溶解全窒素)、DPN(溶解全リン)がプランクトン増殖予測への重要因子として抽出された。 一方で、プランクトン増殖のような自然界の生態系変動は、季節性のような周期性を伴うことが一般的である。上述のデータセットでは、2021年は秋期に限らず、それほど大きなプランクトン・ブルームが生じなかったが2022年は中国大陸東部にとって例外的な年で、年間雨量が少なかった割に大型台風の上陸に遭遇し、太湖への流入河川からの肥料流入(窒素/リンおよび有機性炭素)が夏期まで少なかった割に、台風時に一過的に河川流入量が増水し、2022年だけ特殊なプランクトン増殖パターンが見られたことが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
貝氏は既に気象や流入河川量といった、外部機関から入手したデータも所持しており、日本のような外国で活用できるかは中国側の許可待ち状態にある。こうした懸念が払拭され、気象および流入河川量と紐付けた解析が可能になると、かなりの長期的なプランクトン増殖予測を可能とする手法が構築できると期待される。
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