研究課題/領域番号 |
21F21393
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
伊澤 晴彦 国立感染症研究所, 昆虫医科学部, 室長 (90370965)
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研究分担者 |
FAIZAH ASTRI NUR 国立感染症研究所, 昆虫医科学部, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2021-11-18 – 2024-03-31
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キーワード | 蚊媒介性ウイルス / 昆虫特異的ウイルス / ウイルス干渉 |
研究実績の概要 |
近年、疾病媒介蚊の生息域拡大や殺虫剤抵抗性の発達により、世界各所でヒトや動物に有害な蚊媒介性ウイルス感染症の流行拡大が深刻な公衆衛生上の問題となっている。これに対処するための新たな戦略として、自然界の蚊に病気を起こさず共生している昆虫特異的ウイルス(Insect-specific viruses; ISV)による他種ウイルスに対する特異的な負の干渉作用を利用して、自然界の蚊における蚊媒介性ウイルス(Mosquito-borne viruses; MBV)の増殖抑制と伝播阻止を達成する新技術の確立を目的とした基盤的研究を行った。 これまでに野外捕集および実験室飼育系統の蚊を対象として、MBVの効果的な制御に有用なISVを広く探索した結果、それぞれの蚊が保有している多種多様なISVの存在が明らかとなった。このうち蚊由来培養細胞を用いたウイルス分離に成功したものに関しては、ウイルスゲノムの定量系を構築するとともに、非感染系統の幼虫期におけるウイルス液浸漬法によりISV保有蚊を作出すること試みた。その結果、一部の蚊種でISV保有系統の作出に成功したが、その作出効率は蚊種により差が見られたことから、ISVの宿主特異性が示唆された。一方、様々なISVの潜在感染が判明した複数の飼育蚊系統に関しては、雌成虫へのMBV経口接種によるウイルス重感染実験を実施した。これまでのところ、日本脳炎ウイルスに関しては、その感染増殖に明瞭な影響を及ぼすISV種は見つかっていない。ISVによる干渉作用については、影響を受けるMBV種および宿主蚊種の特異性も想定されることから、さらなるISVの探索と実験的検証、ならびにISV種―蚊種(系統)―MBV種の組み合わせを変えた実験区の設定など、さらに詳しい解析が必要であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
異なる由来の蚊種(系統)が保有するウイルス叢の解析を行い、その多様なISVの保有実態を明らかすることができた。しかし、これら同定したいくつかのISVに関して、日本脳炎ウイルスの感染増殖に影響を及ぼすものは現時点で見つかっておらず、今後対象とするISV種・蚊種(系統)・MBV種の範囲をさらに広げて調べる必要があるため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでのところ、日本脳炎ウイルスの感染増殖に明瞭な影響を及ぼすISV種は見つかっていない。ISVによる干渉作用については、影響を受けるMBV種および宿主蚊種の特異性も想定されることから、さらなるISVの探索と実験的検証、ならびにISV種―蚊種(系統)―MBV種の組み合わせを変えた実験区を設定するなど、さらに対象を広げた解析が必要と考えられた。現在、外国産の重要なMBV媒介蚊種を新たに複数系統導入しており、これらの保有ウイルス叢解析を進めている。今後、ISVとMBVの重感染実験を行い、MBVの効果的な制御に有用なISVを探索する予定である。
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