研究課題/領域番号 |
21F20770
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
野牧 秀隆 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(超先鋭研究プログラム), 主任研究員 (90435834)
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研究分担者 |
SALONEN IINES 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(超先鋭研究プログラム), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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キーワード | マイクロバイオーム / 底生有孔虫 / シングルセルゲノミクス |
研究実績の概要 |
深海生態系の重要な構成要素である底生有孔虫(真核単細胞生物)には、細胞内外に多様な原核生物が共生していることが明らかになりつつある。しかし、その系統、代謝、ホストである有孔虫との関係などはほとんど何も解明されていない。本研究では、海底での生物地球化学サイクルで有孔虫が特に重要な役割を果たしている、貧酸素海域堆積物の有孔虫細胞内にみられる原核生物相を分子系統解析を用いて明らかにするとともに、細胞生物学的手法、電子顕微鏡観察などを用いてその局在、有孔虫細胞との関連性を明らかにする。さらに、研究協力者らとともに有孔虫および共生している原核生物のゲノム解析、遺伝子発現解析を行う。これらの解析を、異なる有孔虫種間、堆積物中の異なる環境から採取した個体間で行って比較することで、周囲の環境に応じて有孔虫がどのような系統、代謝機能を持つ原核生物と共生して適応しているのかを解明する。 2021年度は、相模湾の漸深海帯2地点から採取した堆積物試料から複数種の有孔虫個体を拾い出し、各種解析に用いた。有孔虫種は、当該海域で生態が調査されている代表的な5種とし、それぞれ、酸素や硝酸塩に富んだ堆積物最表層から酸素、硝酸塩の枯渇する深度までの採取した個体を複数用いた。有孔虫細胞内の遺伝子抽出を行い、細胞内に分布する微生物叢について次世代シーケンサを用いた解析を行った。同時に、堆積物の微生物群集についても同様の解析を行い、有孔虫細胞内と堆積物中とで微生物叢がどのように異なるのかを明らかにした。堆積物中の微生物叢は、表層数cmでは顕著な違いが無かったものの、一部の有孔虫種では酸素のある表層1cmとそれ以深の細胞内微生物叢に有意な差が見られた。さらに、有孔虫細胞内に顕著にみられる微生物について、研究協力者とFISHによる蛍光観察を行うための手法検討を行い、2022年度中には可視化が行えるめどがついた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
航海で順調にサンプル取得ができ、複数種の有孔虫についての異なる細胞内微生物叢を解析できた。さらに、研究協力者とともに進めたゲノム解析、遺伝子発現解析の手法確立も順調に進み、データの解析が進みつつある。並行して進めている細胞内微細構造観察結果でも興味深い知見が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度に検討した蛍光染色手法を用い、各種有孔虫細胞内で顕著にみられた微生物が、有孔虫細胞内のどこに局在しているのかをFISHで確認する。特に、特定の微生物が優先しているBulimina subornata、Bulimina subornataと、葉緑体様配列が特徴的に得られたChilostomella ovoideaについて、それぞれの局在の様子を観察する。同時に透過型電子顕微鏡観察も行い、これらの観察結果をFISHによる観察結果と詳細に比較、確認する。また、深海底の堆積物を採取する航海に参加し、新規解析用の個体も得る。 さらに、研究協力者とともに有孔虫と共生微生物のゲノム解析を行う。これにより、有孔虫と共生微生物間での代謝物質のやりとりなどを推定し、有孔虫細胞内外の微生物の機能を考察する。これらを種間比較することで、有孔虫に広くみられる微生物との共生関係に関する進化的、生態学的知見を得る。
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