研究課題/領域番号 |
22F22041
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
平山 悠介 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (60617059)
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研究分担者 |
PARK KWANGJAE 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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キーワード | 熱プラズマプロセス / 永久磁石 / ナノ粒子合成 / 金属ナノ粒子 / 異方性 |
研究実績の概要 |
近年、世界的に永久磁石の使用量が増え続けており、磁石のグローバル市場規模は2026年には368億米ドル(約4兆円、2016年比で2.75倍) に膨れると予測されている。この背景には電気自動車の拡大、航空機やドローン等の電動化の推進がある。これらに搭載されるモーターには更なる高性能/高効率化が求められている。モーターの高効率化には、高性能永久磁石の搭載が不可欠であるが、現状のプロセスでは永久磁石化合物が有するポテンシャルを最大限引き出しきれているとは言えない。永久磁石としてのポテンシャルを発揮させるための方法として粒子の微細化が挙げられるが、100nm程度の平均粒径を有する希土類磁石合金ナノ粒子の合成が可能なプロセスはこれまで報告されてこなかった。我々は新規プロセスとして熱プラズマプロセスに着目し、これまでFeやNd-Fe、Sm-Coのナノ粒子を作製し、その粒径や磁気特性について報告してきた。その結果、得られたSm-Coナノ粒子を用いて焼結磁石を作製したところ、等方性磁石として5Tを超える非常に大きな保磁力を得ることに成功した。これは結晶の微細化が十分に達成されたことに起因する。ただ、さらに高性能化(高残留磁化)のためには、結晶方向をそろえた異方性の焼結体を作製する必要がある。本研究では、熱プラズマプロセスの永久磁石合成応用のために必要なプロセスの深化を目的として、本研究は熱プラズマプロセスで得られるSmCoナノ粉末の異方化について、定量的に評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、熱プラズマプロセスによって得られた Sm-Co ナノ粉末に対する配向度と熱処理の関係を調査した。配向度の定量化は磁場配向した試料をXRD測定することにより強度比((002)/(111))から算出した。まず、熱処理により原子の拡散と結晶化が促進され、得られる Sm-Co ナノ粉末中の硬磁性相の割合は増加し、磁気特性は向上した。一方でSEM画像からSm-Co粒子同士のネッキングも観測された。このネッキングは、好ましいことではなく、外部磁場によってそれぞれの粒子が配向しないことを示唆し、熱処理されていないSmCoナノ粒子は外部磁場によって容易に配向する一方で、熱処理温度が高くなるとその極端に配向度は低下する結果が得られた。そこで、ネッキングすることなく硬質磁性相の増加を目的として、超短時間の熱処理を試みた。予想通り、硬質磁性相の増加が確認でき、ネッキングも抑制され、配向度も改善した。この結果はナノ粒子が外部磁場によって配向するか、しないか、という多くの研究者の疑問に答えることのできる成果であり、高特性異方性バルク磁石作製を実現することができる可能性を示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では熱処理が配向に与える影響を評価することができた。これにより、Sm-Coナノ粉末に対して熱処理を行うことは磁性相の生成にはポジティブに寄与するが、配向の向上には悪影響を与えることが分かった。この問題に対しては、例えば熱プラズマプロセス中での飛行時間を少しでも長くすることでin-situでの熱処理効果を付与することで解決することが期待できる。具体的手法としては、積極的にチャンバーの形状の最適化や追加の熱源の導入によって、粒子の800-900度付近の温度での滞在時間を長くすることが考えられる。これにより、熱プラズマプロセスで非常に結晶性の高い100nm以下の単結晶粉末を得ることができ、ナノ構造を有する異方性磁石の実現が期待できる。
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