研究実績の概要 |
本研究は、ミジンコをはじめとする甲殻類の単為発生機構について、卵を形成するための減数分裂の機構がどのように改変されることで単為発生が獲得されるのかを明らかにし、「甲殻類で広く保存されている機構」と「各甲殻類で固有な機構」、すなわち分裂の「一様性」と「多様性」を明らかにすることを目的としている。そして、甲殻類の系統関係と単為発生機構を比較し、甲殻類の単為発生機構の多様性と進化過程を理解することを目指すものである。 全期間を通して、新型コロナウィルス感染症流行による研究室の利用制限および育児休業による実験の中断により当初予定していた研究の一部は実施が困難であった。そのため単為発生機構についてのゲノム編集基盤を利用した分子機構を明らかにする一連の実験は、今後も継続予定である。当初計画の変更にともない、主に以下の2項目の研究を実施した。(1)甲殻類の単為発生機構の情報を整理し比較するための文献調査を行う。(2)甲殻類の単為発生機構を減数分裂の過程に基づいて分類し、整理する。そして、甲殻類の最新の系統樹に単為発生機構の情報をプロットする。その結果、各々の動物群で散発的に単為発生現象の記載が行われている古い文献の調査を進め、陸生等脚類における見落とされていた性表現の記述を見出した。また、次の3つの性表現に関わる研究に参画し甲殻類の単為発生機構と系統関係についての研究を進めることができた。1) 単為生殖種の存在が予想される軟甲綱タナイス類の性表現に関する研究(Kakui & Hiruta, 2022, 2023, 2024)、2) 貝形虫綱貝形虫類の単為生殖種の性表現に関する研究(論文執筆中)、3) 軟甲綱等脚類の単為生殖種である可能性のある種に関する性表現に関する研究(論文執筆中)。
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