メラニン凝集ホルモン(MCH)は視床下部の一部の神経細胞が合成・放出をする。2021年度はMCHペプチドを合成するMCH神経がどのような神経メカニズムでエネルギー消費を制御するか、MCH神経をジフテリア毒素によって後天的に脱落するモデルマウスを用いた検証を行った。 MCH神経脱落マウスは体重の低下を示し、酸素消費量の増大を示す一方で摂食量には変化がなかった。組織重量の低下は脂肪組織に特異的で、肝臓や骨格筋といった組織重量には変化がなかった。特に褐色脂肪組織については、重量の低下だけではなく赤みを帯びて活発化している様相が示された。そこで、褐色脂肪組織において熱産生の標識となるタンパク発現量について検証をしたところ、UCP1とCOX4の発現が有意に上昇していた。また交感神経活動の指標となるTHについても褐色脂肪組織中で上昇していることが示された。前述の、MCH神経脱落に伴う酸素消費量の増加は行動量で補正した場合においても有意に高まっており、行動量に依存しないエネルギー消費の上昇が、褐色脂肪組織活性の上昇に伴い生じていることが分かった。 これまでの申請者の研究で、交感神経プレモーターニューロンが存在する延髄縫線核がMCH神経の投射を受けていること、さらに、MCH神経脱落に伴い延髄縫線核では神経活動の指標であるcFos陽性の細胞数が増加することが示されている。 これらの結果を論文としてまとめ、本年度のThe Journal of Physiology誌に受理・掲載された。
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