研究課題/領域番号 |
21J20406
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
反田 智之 北海道大学, 文学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 注意 / 抑制 / 視覚探索 / 抑制テンプレート / negative template |
研究実績の概要 |
本年度は,特徴ベースの抑制テンプレートが積極的抑制と探索後抑制のどちらに基づくかを検討した。抑制テンプレートの効果は,手がかりの特徴に対する積極的な抑制に基づくとされる。一方で,積極的抑制ではなく,一度手がかりの特徴に対して注意を向けた後に,その特徴を抑制する可能性が指摘されている。この問題に関して,Zhang et al. (2020) は,特徴+位置ベースの抑制テンプレートにおいては,積極的抑制が行われることを示した。本研究は,位置の効果を排除し,特徴ベースの抑制テンプレートにおいても積極的抑制が行われるかを検討した。特徴ベースの抑制テンプレートにおいても積極的抑制が行われることを示した。本研究は,視覚探索課題に文字プローブ課題を組み合わせた。探索画面が呈示されてからプローブが呈示されるまでのSOAは2つの実験間で操作された(それぞれ250, 100 ms)。視覚探索課題では抑制テンプレートの効果が見られた。プローブ課題において,プローブSOAが250 ms 条件でのみ,不一致条件で標的特徴上の文字が非標的特徴上の文字より多く回答された。重要な点として,両SOAにおいて不一致条件で非標的特徴上の文字が多く回答されなかった。このことは,特徴ベースの抑制テンプレートにおいて,探索後抑制ではなく,積極的抑制が行われることを示す。また,特徴ベースの抑制テンプレートは,位置+特徴ベースのテンプレートと比較して抑制の効果が生じるまでに時間がかかることを示唆する。これらの研究は論文として執筆し,査読段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画の通りには進んではいない。大きな理由として,感染症拡大の影響があり,例年よりも被験者を募集することができなかった。また,本研究は特性不安の傾向が高い被験者を募集し実験を行う予定であったが,上記の理由により募集できなかった。そのため,方法を変更して,当初の目的であった抑制テンプレートのメカニズムの検討を行った。現在進めている実験をR4年度内にまとめ,論文の執筆を目指している。
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今後の研究の推進方策 |
今後も感染症の拡大状況によっては被験者を募集できないことがあると考えられる。また,そのような状況に陥った場合に,特性不安傾向が高い被験者を募集することはより困難であると考えられる。そのため,当初は抑制テンプレートのメカニズムを特性不安との関連で検討する予定であったが,今後は別の手法を用いて抑制テンプレートのメカニズムの検討を行っていく予定である。R3年度終盤から実施している研究により,抑制テンプレートを用いた際に積極的抑制と探索後抑制のどちらが生じるかは,抑制の手がかりの有効性によって決定される可能性が示唆された。今後はこの点をより詳細に検討することでメカニズムの解明に繋げていく。
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