プロテアーゼ恒常発現系を利用した高効率ウイルス分離法の開発

2023 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 22KJ0023
• 配分区分: 基金
• 研究機関: 大阪公立大学
• 研究代表者: 岸本 麻衣 大阪公立大学, 大学院獣医学研究科, 助教
• 研究期間 (年度): 2023-03-08 – 2024-03-31
• キーワード: プロテアーゼ依存性ウイルス / ウイルス分離 / 人獣共通感染症 / ロタウイルスA / 脳心筋炎ウイルス / コウモリ / マストミス

研究実績の概要

本研究では、プロテアーゼ依存性ウイルスを主な標的として、宿主プロテアーゼを発現する細胞を用いたウイルス分離と次世代シークエンサーによる網羅的ウイルス検出を組み合わせたスクリーニング系を構築し、ザンビアで採取された野生動物合計約400検体からウイルス分離を実施し、脳心筋炎ウイルスおよびロタウイルスA（RVA）を分離した。
本年度は、コウモリおよび齧歯類動物から分離されたRVAの性状解析を実施した。近年、一部の分節でコウモリや齧歯類由来のRVAと類似した遺伝子型をもつRVAがヒトから検出されており、コウモリと齧歯類動物のRVAの人獣間伝播の可能性が懸念されている。しかし、これらの報告はゲノム解析にとどまるものが多く、ウイルスの分離及び性状解析はほとんど実施されていない。まず、全分節の遺伝子配列情報を決定し、遺伝子再集合の評価、および系統学的解析により、特徴的な進化系統を有することを明らかにした。続いて、RVAが細胞侵入する際の接着因子である細胞表面糖鎖とRVAの結合性を調べた結果、16-06株は細胞表面のシアル酸と結合して細胞内に侵入する一方、MpR12株はシアル酸とは結合しないことが明らかになった。さらに、乳飲みマウスへの経口接種により分離株の病原性を評価した結果、16-06株およびMpR12株はどちらも乳飲みマウスに感染し、下痢を引き起こすことが示された。また、3次元再構築したヒト初代腸管上皮に対するRVAの感染性を調べた結果、16-06株およびMpR12株は、ヒト由来RVA Wa株と同等の効率で感染増殖することが明らかになった。本研究では、特徴的な遺伝学的背景を有するコウモリおよび齧歯類由来RVAのウイルス学的性状を、それらのRVAが人獣共通感染症となる可能性についてさらなる調査が必要であることが示唆された。

研究成果

• [雑誌論文] Combination therapy with oral antiviral and anti-inflammatory drugs improves the efficacy of delayed treatment in a COVID-19 hamster model (2024)
  • 著者名/発表者名: Sasaki M, Sugi T, Iida S, Hirata Y, Kusakabe S, Konishi K, Itakura Y, Tabata K, Kishimoto M, Kobayashi H, Ariizumi T, Intaruck K, Nobori H, Toba S, Sato A, Matsuno K, Yamagishi J, Suzuki T, Hall WW, Orba Y, Sawa H.
  • 雑誌名: eBioMedicine 巻: 99 ページ: 104950～104950
  • DOI: 10.1016/j.ebiom.2023.104950
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [雑誌論文] Comparative pathogenicity of SARS-CoV-2 Omicron subvariants including BA.1, BA.2, and BA.5 (2023)
  • 著者名/発表者名: Tamura T, Yamasoba D, Oda Y, Ito J, Kamasaki T, Nao N, Hashimoto R, Fujioka Y, Suzuki R, Wang L, Ito H, Kashima Y, Kimura I, Kishimoto M, Tsuda M, Sawa H, Yoshimatsu K, Yamamoto Y, Nagamoto T, Kanamune J, Suzuki Y, Ohba Y; Genotype to Phenotype Japan (G2P-Japan) Consortium; Yokota I, Matsuno K et al.
  • 雑誌名: Communications Biology 巻: 6 ページ: 772
  • DOI: 10.1038/s42003-023-05081-w
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Impact of Imprinted Immunity Induced by mRNA Vaccination in an Experimental Animal Model (2023)
  • 著者名/発表者名: Fujita S, Uriu K, Pan L, Nao N, Tabata K, Kishimoto M, Itakura Y, Sawa H, Kida I, Tamura T; Genotype to Phenotype Japan (G2P-Japan) Consortium; Fukuhara T, Ito J, Matsuno K, Sato K.
  • 雑誌名: The Journal of Infectious Diseases 巻: 228 ページ: 1060～1065
  • DOI: 10.1093/infdis/jiad230
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Development of flavivirus subviral particles with low cross-reactivity by mutations of a distinct antigenic domain (2023)
  • 著者名/発表者名: Tabata K, Itakura Y, Ariizumi T, Igarashi M, Kobayashi H, Intaruck K, Kishimoto M, Kobayashi S, Hall WW, Sasaki M, Sawa H, Orba Y.
  • 雑誌名: Applied Microbiology and Biotechnology 巻: 107 ページ: 7515～7529
  • DOI: 10.1007/s00253-023-12817-5
• [雑誌論文] Morphogenesis of Bullet-Shaped Rabies Virus Particles Regulated by TSG101 (2023)
  • 著者名/発表者名: Itakura Y, Tabata K, Saito T, Intaruck K, Kawaguchi N, Kishimoto M, Torii S, Kobayashi S, Ito N, Harada M, Inoue S, Maeda K, Takada A, Hall WW, Orba Y, Sawa H, Sasaki M.
  • 雑誌名: Journal of Virology 巻: 97 ページ: e0043823
  • DOI: 10.1128/jvi.00438-23
• [学会発表] ザンビアのエジプトルーセットオオコウモリおよびマストミスから分離されたロタウイルスAの性状解析 (2023)
  • 著者名/発表者名: 岸本麻衣、梶原将大、高田礼人、大園誠也、鈴木忠樹 、伊藤直人、大場靖子、澤洋文、佐々木道仁
  • 学会等名: 第166回日本獣医学会学術集会
• [学会発表] SARS-CoV-2非構造タンパク質のアミノ酸配列が関与するCOVID-19重症化メカニズム (2023)
  • 著者名/発表者名: 岸本麻衣、鳥羽晋輔、上村健太朗、丸山優樹、日下部伸治、佐藤彰彦、大場靖子、澤洋文、佐々木道仁
  • 学会等名: 第70回日本ウイルス学会学術集会
• [学会発表] 多様な哺乳類および鳥類デルタウイルスからサテライト/ヘルパーウイルスと宿主動物の共進化機構を紐解く (2023)
  • 著者名/発表者名: 岸本麻衣、川崎純菜、北尾晃一、堀江真行
  • 学会等名: NGS EXPO 2023
• [学会発表] 多様な哺乳類および鳥類デルタウイルスから紐解くサテライト/ヘルパーウイルスと宿主動物の共進化機構 (2023)
  • 著者名/発表者名: 岸本麻衣、川崎純菜、北尾晃一、堀江真行
  • 学会等名: 第46回日本分子生物学会年会