研究課題/領域番号 |
22J00446
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
田路 矩之 北海道大学, 理学研究院, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | 動物行動学 / 行動進化 / 細胞進化 / ゲノム進化 / single cell RNA-seq / single cell ATAC-seq |
研究実績の概要 |
本研究では、鳴禽類ソングバードの歌行動の種間多様性に着目し、行動進化の分子神経基盤の解明を目指す。これまでの研究からソングバードの歌制御回路において、興奮性投射ニューロンの神経機能特性(遺伝子発現)の個体/種間多様性が大きい、という実験結果を得た。この結果を基にソングバードの歌行動を制御する神経回路の種分化過程について、興奮性投射ニューロンの生理特性(遺伝子発現)の違いが歌の違いを生じ、その差が種として固定されることで、種特異的行動の進化が生じるという作業仮説を立てた。本研究ではこの仮説に基づき1. 興奮性投射ニューロンの生理特性の多様性が歌表現型に及ぼす作用、 2.多様性を生み出すメカニズム、を同定し、それらが種間と個体間で同様のものかを検証する。 当該年度は以下の実験を行った。 実験(I-1) 異種間ハイブリッドを用いた遺伝子発現パターンと歌表現型の関連性の検証 キンカチョウとカノコスズメのハイブリッドは、歌表現型にバイアスがあり、キンカチョウの歌のみを歌う個体とカノコスズメの歌のみを歌う個体が存在する。これらハイブリッドの歌制御回路についてsingle cell RNA-seqを行い、歌表現型のバイアスと遺伝子発現パターンのバイアスが一致するかを調べた。 実験(I-2) 同じ/異なる歌を学習させたキンカチョウを用いた遺伝子発現パターンの検証 同じまたは異なる歌を歌うキンカチョウを用いてsingle cell RNA-seqを行い、歌表現型が同じ個体では遺伝子発現パターンも同じなのかを検証した。 これらの検証結果からトランスクリプトーム全体のパターンと歌のパターンは一致せず、むしろトランスクリプトームパターンは遺伝的背景を強く反映していることを明らかにした。今後は個々の遺伝子について歌パターンとの相関を検証する必要があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度に計画していた実験工程を完了したが、本年度の研究目的を達成するためにより精密な検証を行う必要があることが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の検証の結果、歌パターンはトランスクリプトーム全体のパターンを反映しておらず、遺伝子と歌との関連を検証するためには、個々の遺伝子と歌の音響、時系列パターンをより精緻に検証する必要が生じた。2023年度はこの検証をおこなうと共に、当初より予定していた細胞移植による歌の人為的制御およびsingle cell ATAC-seqによる遺伝子発現の種差を生じるゲノム基盤の同定を目指す。
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