研究実績の概要 |
今年度は, 本研究と関連が深い志村多様体の数論幾何およびに関連する代数群の整数論について研究を行った. 以下, その詳細について説明する. Pei-Xin Liang氏(国立精華大学), Hsin-Yi Yang氏(パリ・サクレー大学), Chia-Fu Yu氏(中央研究院)と共同で, CM代数に付随するトーラスの玉河数について研究を行った. このトーラスは, A型PEL型志村データに現れる群であるCMユニタリ群と密接に関係していることが知られている. その結果, すべての2の整数べきが上述のトーラスの玉河数として実現されることを証明した. さらに, この定理の証明を行う過程で, CM代数に付随するトーラスのTate-Shafarevich群がGalois群の指標群の言葉で記述できることも得られた. これらの結果は論文として公表済みであり, 現在投稿中である. さらに, 上記の玉河数の結果をD型のPEL志村データに現れる群に対して一般化することにも成功した. 証明の鍵は, Colliot-Theleneによって構築された連結簡約代数群の脆弱分解の理論を利用して, 考察すべき群の数論的性質を前述のCM代数に付随するトーラスまたはその変種に対する同様の問題に帰着することである. この結果については, 現在論文を執筆中である. 一方で, CMユニタリ群に対する志村多様体において, 素数pでの特殊ファイバー内の点のpと互いに素なHecke作用による軌道についても研究を行った. そして, ある\mu-通常点の軌道が稠密とはなり得ないような志村多様体の例を構成した. この結果に関して特筆すべき点は, pでの特殊ファイバーが滑らかな場合で同様の現象は起こりえないことである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Rapoport-Zink空間のGalois表現類似の幾何的性質の研究に関しては, 現時点では十分な結果が得られているとは言い難い状況である. 一方, 志村多様体の悪い還元については, 良い還元を持つ場合では起こりえない新たな現象を明らかにすることができた. さらに, 志村多様体で現れる代数群における玉河数などの整数論的性質については, 当初の想定を超える結果を得ることができた.
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今後の研究の推進方策 |
現在までに知られている志村多様体やRapoport-Zink空間の結果と今年度に得られた志村多様体の数論幾何に関する知見を応用して, 引き続きにおけるRapoport-Zink空間のGalois表現類似の幾何の研究を推進する. 志村多様体の悪い還元については, Rapoport-Zink空間と関連の深いNewton stratificationやcentral leafと連結成分との関係について, CMユニタリ群以外の場合にも研究を行う予定である.
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