本研究では、高精度な津波即時予測を目的として、カルマンフィルタを用いて水圧計と地震計を組み合わせることによる地震時海底変位の即時予測手法の開発を行った。初めに数値シミュレーションを用いた数値実験によって、提案手法の妥当性を確認し、その後、実際の記録に対して適用した。その結果、実記録では、地震時に地震計と水圧計の両方において非物理的なオフセットが生じており、その影響の補正をリアルタイムに行うのは現状では困難であることがわかった。一方で、補正後に得られる地震時海底変位波形は、従来得られていなかった、海域で発生する地震の断層近傍における情報となることから、断層モデルを作成するにあたり有用であることも明らかになった。 本研究の成果は国際学術誌に論文として投稿済みであり、現在査読中である。 また本研究を推進するにあたり、2023年5月から12月までアメリカに滞在し、国際共同研究を行った。 さらに、期間中に発生した2022年フンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ火山噴火に伴う大気津波、2023年鳥島沖津波および2024年能登半島地震に伴う津波についても解析を行い、それぞれの波源モデルを作成し、(1)トンガ火山噴火の大気津波については、観測された津波後続波を説明するためにはラム波だけでは不十分であり、大気重力波の高次モードを考慮する必要があること、(2)鳥島近海で発生した津波は、孀婦岩付近の連続的な海底火山噴火が波源となった可能性が高いこと、(3)能登半島地震の断層は、東西に大すべりが集中し震源付近のすべり量は小さかったこと、を明らかにした。これらの成果も論文として国際学術誌に投稿しており、前二者については既に出版済みであり、後者についても現在査読中である。
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