研究課題/領域番号 |
22J10499
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中島 直道 北海道大学, 情報科学院, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2024-03-31
|
キーワード | 情報幾何学 / 特異点理論 / 双対平坦構造 / 特異モデル / マルコフモデル / 波面 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,特異モデルの情報幾何学に当たる概ヘッセ多様体の理論を用いた統計科学・情報科学への応用可能性を検討すること,およびその理論深化を行うことであった. 本年度は以下の課題について取り組んだ.(1)概ヘッセ多様体の計量の退化を引き起こす特異点についての特徴づけ:この特異点は概ヘッセ多様体に備わる波面の特異点として捉えることができ,波面に現れる典型的な特異点の標準形をアファイン座標系において導出した.この標準形は特異点周りの情報幾何的(アファイン微分幾何的)解析を可能とするものである.また,そのような特異点の存在条件を概ヘッセ多様体上の正準ダイバージェンスにより与えた.この条件式は概ヘッセ多様体上の幾何学と統計多様体の幾何学との関連を示唆するものである.以上の結果を論文としてまとめた.(2)拡大マルコフモデルの幾何学について:統計学で用いられるマルコフモデルの情報幾何学的な構造は長岡浩司氏(電気通信大学名誉教授)・竹内純一氏(九州大学)らによって研究されており,特に竹内氏の導入した拡大マルコフモデルは退化したフィッシャー計量を持つ空間である.大本亨氏(早稲田大学)と金野聖平氏(北海道大学院生)との共同研究により拡大マルコフモデルに概ヘッセ構造が入ることを示し,そのポテンシャル関数の陽的な表示を与えた.また,拡大マルコフモデルには情報幾何学における正測度空間の理論に基づく双対平坦構造が入ることが期待され,現在はこの方向性の検討を行なっている.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り,理論深化および応用可能性検討として上記(1)についての論文の出版を行い,統計科学・情報科学における概ヘッセ多様体の具体的な応用先の一つとして拡大マルコフモデルの研究を進めた.
|
今後の研究の推進方策 |
正測度理論の観点に基づく拡大マルコフモデルの双対平坦構造を調べ,その結果を上記(2)の結果と併せて学術論文として発表する.また,理論深化に関連して,ヘッセ幾何学とパラケーラー幾何学の関係性の特異版を模索する.
|