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2022 年度 実績報告書

核内構造体パラスペックルによる細胞分化制御機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22J10647
配分区分補助金
研究機関北海道大学

研究代表者

戸谷 ひかる  北海道大学, 生命科学院, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2022-04-22 – 2024-03-31
キーワードパラスペックル / Neat1 / ノンコーディングRNA / ベージュ細胞
研究実績の概要

細胞内には多くの膜を持たない構造体が存在している。その1つであるパラスペックルはタンパク質をコードしないノンコーディングRNAであるNeat1を骨格として形成され、様々なRNA結合タンパク質からなる核内構造体である。申請者はこれまでにパラスペックルを形成できないNeat1 KOマウスでは寒冷刺激時の体温保持に重要なベージュ細胞の分化誘導が抑制されていることを見出している。
昨年度は室温および寒冷飼育時での皮下白色脂肪組織におけるRNA-seqを行い、網羅的な発現変動遺伝子解析を行った。その結果、室温飼育時には発現変動遺伝子がほとんど見られない一方で、寒冷飼育時には多くの発現変動遺伝子が同定された。この結果より、室温飼育時の皮下白色脂肪組織には大きな差はない一方で、寒冷刺激時の応答やシグナル伝達に異常があることが示唆された。また当初困難であった白色脂肪組織での凍結切片の作製が試行錯誤の結果可能となった。今後はRNA-seqで見られた発現変動遺伝子についてNeat1との共局在や寒冷刺激による局在変化が見られるか検討を行う。
Neat1には長さの異なる2つのアイソフォーム(Neat1_1,Neat1_2)が存在している。しかしながらこれまでの解析では両方のアイソフォームを欠損させたマウスを用いており、ベージュ細胞の分化においてどちらが重要であるか不明であった。そこで申請者はNeat1_1特異的欠損マウスを用いた実験により、Neat1_1特異的欠損マウスではベージュ細胞の分化誘導が正常に生じ、野生型と比較してその誘導が促進している傾向があることを見出した。Neat1_1特異的欠損マウスでは、代替的にNeat1_2の発現量およびパラスペックルが増加することが報告されており、パラスペックルがベージュ細胞の分化誘導を促進していることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初計画していたRNA-seqを行い、Neat1KOマウスで発現が変動している遺伝子を複数同定することに成功している。これによりNeat1が機能を発揮する際のターゲットとなる遺伝子を同定することができたと考えている。また当初困難であった凍結切片の作製が可能となったことにより、染色による局在の解析が可能となった。RNA-seqにより同定された遺伝子とNeat1の関連性を調べる上で重要な実験であり、可能となった意義は大きいと考えている。
またNeat1_1特異的欠損マウスにおいて、ベージュ細胞への分化誘導が正常に起き野生型と比較して促進している傾向が見られることが明らかとなっている。Neat1がベージュ細胞の分化誘導に必要であることを補強する重要なデータである。
その一方で培養細胞系においては、顕著な表現型が見られない結果となっており当初予定していた実験が行えなかった。現在はウィルスやエレクトロポレーションを用い、個体における遺伝子発現系の樹立を目指している。

今後の研究の推進方策

昨年度の実施したRNA-seqにより、Neat1KOマウスで特異的に変動する遺伝子を複数同定している。また凍結切片の作製が可能となったことから、染色によりこれらがパラスペックルと共局在するか、また寒冷刺激によりその局在が変化するかなどの解析を行う。
また昨年度、詳細な分子メカニズムを明らかとするために培養細胞系の確立を試みた。しかしながらNeat1 KOマウスの皮下白色脂肪組織から単離した初代培養細胞において、ベージュ細胞の分化誘導効率は野生型と比較して顕著な差が見られなかった。培養細胞では薬剤を用いて分化誘導を行なっており、生理条件下と比較してより強いシグナルを与えているために差が見られないと考えている。そこでウィルスやエレクトロポレーションを用いることにより個体の皮下白色脂肪組織において、遺伝子発現系の樹立を進めていく予定である。現在GFP発現レンチウィルスの投与により、GFPの蛍光を顕微鏡下において確認できており、今後は目的の皮下脂肪細胞およびベージュ細胞において発現が可能であるか確認を進めていく。その後、パラスペックルの構成タンパクやRNA-seqにより得られた候補遺伝子を強制発現させその局在やベージュ細胞の誘導効率を比較することにより、どの因子がパラスペックルによるベージュ細胞の誘導制御に重要なのかを明らかとしていきたい。
また昨年度のNeat1_1特異的欠損マウスを使用した結果より、Neat1_2およびパラスペックルがベージュ細胞の分化誘導を促進していることが示唆された。RNA-seqにより得られた候補遺伝子やベージュ細胞に重要な遺伝子のパラスペックルによる発現制御機構を明らかとするために、相互作用している因子を網羅的に同定することを予定している。具体的な手法としてはNeat1に対するビオチン化アンチセンスオリゴを用いたRNAプルダウンアッセイを進める。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Species-specific formation of paraspeckles in intestinal epithelium revealed by characterization of NEAT1 in naked mole-rat2022

    • 著者名/発表者名
      Yamada Akihiro、Toya Hikaru、Tanahashi Mayuko、Kurihara Misuzu、Mito Mari、Iwasaki Shintaro、Kurosaka Satoshi、Takumi Toru、Fox Archa、Kawamura Yoshimi、Miura Kyoko、Nakagawa Shinichi
    • 雑誌名

      RNA

      巻: 28 ページ: 1128~1143

    • DOI

      10.1261/rna.079135.122

    • 査読あり
  • [学会発表] 長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA) Neat1による寒冷刺激時のベージュ細胞分化制御機構2022

    • 著者名/発表者名
      戸谷ひかる、岡松優子、山口良文、廣瀬哲郎、中川真一
    • 学会等名
      RNAフロンティアミーティング2021
  • [学会発表] 長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA) Neat1による寒冷刺激時のベージュ細胞分化制御機構2022

    • 著者名/発表者名
      戸谷ひかる、岡松優子、山口良文、廣瀬哲郎、中川真一
    • 学会等名
      第45回日本分子生物学会
  • [学会発表] The long noncoding RNA Neat1 regulates beige cell differentiation upon cold stimulation.2022

    • 著者名/発表者名
      Hikaru Toya, Yuko Okamatsu, Yoshihumi Yamaguchi ,Tetsuro Hirose, Shinichi Nakagawa
    • 学会等名
      第23回日本RNA学会

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公開日: 2023-12-25  

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