研究課題/領域番号 |
22J11832
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
近藤 研 北海道大学, 環境科学院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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キーワード | 南極 / 氷床 / 氷河 |
研究実績の概要 |
2021年1月に南極ラングホブデ氷河で取得したデータ(氷河流動速度、底面水圧、底面加速度)を解析した。その結果、激しい氷融解や降雨があった際に氷河底面水圧が上昇し、氷河流動が短期的に(1週間程度)加速したことが明らかとなった。この流動加速が生じた際には、氷河底面の加速度計で測定した振動イベント数に顕著な増加がみられた。本結果は、氷河表面で生じた水が底面へ流入し、水圧を上昇させて氷河の底面滑りを促進したことを示し、氷河流動加速のメカニズムに示唆を与えるものである。また、氷河底面で測定した加速度データの解析にあたってオスロ大学を訪問し、氷河底面環境を専門とするThomas Vikhamar Schuler教授、および氷河地震を専門とするUgo Nanni研究員と観測データの議論を行った。両者から氷河底面水文環境のモデリング手法や、氷河底面水流で生じる微振動の変動を抽出する底面加速度データの解析手法を学び、氷河底面環境に関する検討が進んだ。これらのデータ解析に加え、第64次南極地域観測隊に、氷河上で通年稼働していた観測機器のデータ回収を依頼した。 人工衛星データを使った解析では過去20年間に取得されたデータを使用し、東南極リュツォ・ホルム湾に流入する5つの氷河で、氷河流動速度、末端位置、表面標高の経年変化を定量化した。これらの氷河変動と、リュツォ・ホルム湾の海洋で取得されたデータを比較した結果、氷河変動が氷河前に発達する海氷の消長に影響を受けることが明らかとなった。この成果をJournal of Glaciology誌に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラングホブデ氷河で取得した現地観測データの解析は予定通り進んでおり、上記の成果を日本雪氷学会の研究大会や、AGU Fall Meeting 2022等の国内外の学会で発表した。受入教員やオスロ大学の共同研究者と議論を進め、研究目的達成に必要な数値モデル構築やデータ解析手法の習得を予定通り実施できた。観測データの解析に加えて人工衛星データ解析を着実に進め、学術誌への投稿を実施できた。
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今後の研究の推進方策 |
第64次南極地域観測隊が回収した通年観測データは、2023年4月に納品予定である。本データは、氷河の水文環境や流動変化の季節的な変動を記録している可能性が高いため、納品次第解析を進める。同時に、これまでに実施してきた現地観測データの解析をさらに進め、氷河底面環境と流動変化に関する論文を出版する。
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