従来型ハイブリッドロケットの欠点を克服できる可能性を有する端面燃焼式ハイブリッドロケットの実現に向けた研究を行っている。ロケットとして運用する上で端面燃焼式ハイブリッドロケットの燃焼原理である安定燃焼の成立条件の把握が必須である。その成立条件を調査するため、2023年度はこれまでに行った実験結果を元に理論の構築を行った。 2022年度に行った燃焼実験では燃料材質は全てアクリル樹脂であったが、酸化剤には酸素および亜酸化窒素の2種類を用いていた。本年度の目標はそれらのデータを元に圧力、酸化剤流速、および酸化剤化学種の差が境界条件に与える影響を解明することであった。 実際に取り組んだ項目としてはA)Ansys ChemkinやNASA CEAを用いた化学反応解析。B)ガスバーナーにおける予混合火炎理論の導入。C)燃料表面におけるエネルギーバランスの計算。D)径方向燃料後退速度の調査。E)消炎距離による境界条件の調査。F)ダムケラー数による境界条件の調査等である。A~Fに関して検証を行ったところ、F)のダムケラー数による整理が最も合理的な境界値を与えるという結論に至った。 ダムケラー数は流体の滞留時間と化学反応時間の比で表され、燃焼学分野において消炎現象とよく関連付けられる値である。その算出の過程で酸素と亜酸化窒素それぞれの物性値や化学反応に関する定数を用いることで、酸化剤に依らず近しい境界値を得るという結果を得た。 先述した項目のうち、E)は国内学会、およびB)は論文発表済みであり、上記の考察に関しては現在論文としてまとめている最中である。
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