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2022 年度 実績報告書

スフィンガジエンによるスフィンゴ脂質多様性創出機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22J12598
配分区分補助金
研究機関北海道大学

研究代表者

城島 啓佑  北海道大学, 先端生命科学研究院, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2022-04-22 – 2024-03-31
キーワードスフィンガジエン / FADS3 / スフィンゴ脂質 / セラミド / 基質特異性
研究実績の概要

予定通り脂肪酸不飽和化酵素FADS3の酵素学的解析とスフィンガジエン(SPD)の生理機能解明の2点について研究を行った。加えて,予定にはなかったSPDの代謝についての詳細な解析も行なった。
FADS3の酵素学的解析について予定通り研究を遂行した。In vitroや細胞系での解析から,FADS3の基質が遊離のスフィンゴシンではなくセラミドであることを明らかにした。さらにセラミドの構成成分であるスフィンゴシンと脂肪酸の鎖長に対しての特異性を調べたところ,脂肪酸鎖長には基質特異性をもたない一方で,スフィンゴシン鎖長に対しては特異性をもつことを明らかにした。
SPDの生理機能についても白色脂肪組織と腎臓の解析を予定通り行った。Fads3 KOマウスは通常状態では目立った表現型が見られないことから,高脂肪食負荷時の白色脂肪組織における機能を調べたが,野生型マウスと比較してKOマウスに大きな差異は見られなかった。続いて,腎機能障害を誘発することが知られるシスプラチンを投与したFads3 KOマウスの腎機能を生化学的解析により評価した。その結果,Fads3 KOマウスでは野生型と比較して腎機能が低下する傾向が見られ,SPDがシスプラチン誘発性の腎負荷を緩和する機能をもつことが示唆された。
SPDの代謝について細胞のトレーサー実験から,SPDスフィンゴ糖脂質に代謝されづらいことが明らかとなった。
本研究で明らかとなったFADS3の酵素学的特性は多彩で重要な機能を有するスフィンゴ脂質の構造多様性を生み出す分子的基盤の解明の一端を担うと考える。また,SPDの機能は今までほとんど明らかではなかったが,シスプラチン誘発性腎負荷によってFads3 KOマウスの腎臓機能低下が見られたことから,薬剤性腎不全とSPDの関連が示唆され,本研究結果は薬剤性腎不全の回避や治療に貢献する可能性があると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

FADS3の酵素学的解析とスフィンガジエン(SPD)の生理機能解明それぞれ,ほぼ予定していた内容は遂行できたと考えている。特にFADS3の酵素学的解析についてはFADS3の基質特異性の解明について当初よりも拡大して基質特異性を解明できた。また,これに加えてスフィンガジエンの代謝にも着目し,新しい知見を得ることができた。当該年度では上記2つの結果を第15回セラミド研究会で報告することができた。また,既に論文も作成中であり,次年度の前期には投稿可能であると予測されることから当初の予定以上に進捗している。
SPDの生理機能については腎機能ではKOマウスで野生型マウスとの違いが見られ,今後の研究の進展も期待できる。しかし,当該年度で予定していた以上の解析は進んでおらず,進捗状況としては予定通りである。脂肪組織の解析は高脂肪食負荷で野生型との差が見られなかったことから,予定していた詳細な解析は行わないこととした。これらの状況を総合して現在の研究の進捗はおおむね順調とした。

今後の研究の推進方策

今後の研究方策としてFADS3の酵素学的解析,スフィンガジエン(SPD)の代謝,SPDの生理機能解明のそれぞれについて記載する。
FADS3の酵素学的解析については計画書通り,FADS3活性に補酵素としてNADHまたはNADPHを必要とするかをin vitroで調べる。SPDの代謝については細胞だけではなくマウス組織におけるSPDの代謝を調べ,前年度で行なった細胞のトレーサー実験との整合性を確かめる。これらをまとめることで,論文を完成させ年度前半までに論文を投稿することを目標とする。
SPDの生理機能についてはFads3 KOマウスに対する高脂肪食負荷における脂肪組織の解析はKOマウスと野生型で違いが見られなかったことから中断し,シスプラチン投与における腎臓の解析に絞って行う。計画としてはシスプラチン投与時の生化学検査の結果の再現性をよりマウスの匹数を増やし,確認する。その後,腎臓のHE染色などの組織学的解析やRNAシークエンスにおける遺伝子発現解析,LC-MS/MSによる脂質解析を行い,Fads3 KOマウスにおける腎機能低下のより詳細な機構を解明する。また,FADS3 KO細胞に対してシスプラチンを添加し,野生型細胞と比較して生存アッセイを行い,シスプラチンに対する感受性を細胞レベルで評価する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2022

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] セラミド不飽和化酵素FADS3の基質特異性と4,14-スフィンガジエンの代謝2022

    • 著者名/発表者名
      城島啓佑,木原章雄
    • 学会等名
      第15回セラミド研究会学術集会

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公開日: 2023-12-25  

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