研究課題/領域番号 |
22J13742
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 北海道大学 |
特別研究員 |
上山 祐史 北海道大学, 生命科学院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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キーワード | イオン液体 / 高分子 / 超高分子量 / ゲル / イオンゲル / レオロジー / 溶媒和 / シミュレーション |
研究実績の概要 |
我々はイオン液体中において超高分子量のポリマーが物理的に絡み合うことでゲル化した、超高分子量イオンゲルを報告している。超高分子量イオンゲルはビニルモノマーをイオン液体中において極低開始剤雰囲気で重合することでone potかつ精製不要で合成することができる。本研究では超高分子量イオンゲルの基礎物性や力学特性を明らかにし、超高分子量化に伴う新たな物性の発現やそのメカニズムの解明を目的とする。 本年度はイオン液体中に溶解したポリマーの超高分子量化に伴う物性変化を粘弾性測定および動的光散乱測定により評価した。従来の開始剤濃度で合成された分子量が100万以下の高分子では絡み合いのみでは自己支持性を維持することができない一方、超高分子量の場合では流動変形が抑制され、極めて広い温度・周波数範囲で優れた形状安定性を示すことがわかった。さらに引張試験により応力-歪み挙動を調べたところ、化学架橋ゲルではみられなかった優れた伸縮性のみならず、室温において迅速な自己修復性を示した。切断面の経時的な平衡化により修復率が低下したことから、切断直後の切断面の非平衡性が重要な役割を果たすことが示唆された。さらに、ポリマーの側鎖構造をわずかに変化させると自己修復性が低下したことから、ミクロな溶存構造が自己修復性に影響していると考えられた。分子動力学シミュレーションを用いた溶媒和構造解析の結果、優れた自己修復性を示すイオンゲルではポリマーがより広がったコンフォメーションをとることがわかり、ミクロな溶存構造と自己修復性との相関が示唆された。以上より、研究の目的を達成することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験およびシミュレーションにより超高分子量イオンゲルが示す自己修復性について調べ、ミクロな溶存構造と修復性との相関を明らかにした。さらに高分子の化学構造のみならず、溶媒であるイオン液体の化学構造によってもまたイオンゲルの力学特性が大幅に変化することを見出した。これまでゲルの力学特性は網目構造の設計によるものがほとんどであったが、本検討により溶媒であるイオン液体の化学構造による力学設計が可能であることが確認できた。以上より、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
超高分子量イオンゲルの力学特性に及ぼすモノマーおよびイオン液体の化学構造の影響を調べる。様々なモノマーとイオン液体の組み合わせで超高分子量イオンゲルを合成し、その粘弾性や応力-歪み挙動のスクリーニングを行う。また、並行して分子動力学シミュレーションおよび放射光X線全散乱実験を行い、高分子のミクロ溶媒和構造と合わせて議論を進める。
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