研究課題
1.生体試料の脂質分析を行い、地衣類バイオマーカーとして利用可能な特異的な化合物の探索を行った。試料からは多様な不飽和炭化水素が検出され、これらの組成が地衣類の共生藻の違いに起因しており、化学分類に利用できることを明らかにした。また、大多数の地衣類からは特異なheptadecadieneが検出され、堆積物中での有力な地衣類バイオマーカー候補として国際誌で報告した。2.南仏、北米、南米、日本の白亜紀海洋無酸素事変の各層準での菌類パリノモルフ(有機質微化石)分析を行い、古環境変動に対する菌類フロラの変遷を復元した。菌類フロラの変遷は地域毎に異なる結果となった一方で、先行研究や他のバイオマーカー指標との比較から植生の変化に菌類フロラが大きく影響を受けていることが示唆され、後背地の古環境復元指標に利用できる可能性を見出した。3.グリーンランド中原生界堆積岩のバイオマーカー分析を行い、多様な芳香族フラン類を検出した。これらの化合物の組成は層準毎に大きく変化しており、起源生物の寄与の変化が要因と考えられた。より詳細な検討が必要ではあるが、現代においては、自然界における芳香族フラン類の主たる産生生物である地衣類のような生命体が存在した可能性が示唆された。4.堆積物中での続成過程を模した熱熟成シミュレーション実験を行い、典型的な湿原の地衣類であるCladonia rangiferinaから特異的に1-メチルジベンゾフラン(1-MDBF)が生成されることを明らかにした。一方、堆積物中の芳香族フラン類の起源とされてきたセルロースやリグニンなどからは生成が確認されず、少なくとも低熟成度帯の試料においては、地衣類バイオマーカーとして1-MDBFが利用できる可能性を示した。今後これらの知見を用いて、地質時代における地衣類の挙動を復元し、進化史や地質学的イベントにおける関与などを明らかにしていく。
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Communications Earth & Environment
巻: 5 ページ: -
10.1038/s43247-024-01214-z
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