研究課題/領域番号 |
22J20306
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
間藤 昂允 北海道大学, 情報科学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | 超電導マグネット / 無絶縁コイル / 高温超電導 / 磁場中移動 |
研究実績の概要 |
2022年7月に受理された論文において「超高磁場を用いたマイクロプラスチック回収」について報告した.これまで磁気分離分野では用いられてこなかった解析手法である粒子法を用いて,申請者らが提案した回収構造の実現可能性を調査するものである.2023年現在では実現できないサイズ及び磁場強度であるが最大磁場15 T程度を1.5 mにわたり発生させることで海水に含まれるマイクロプラスチックを80 %程回収できることが確認された.一方,シミュレーションモデルでは極めて小さいマイクロプラスチックを表現するために水粒子内の体積分率からなる力を仮定しているがこれらモデルの検証を行なっていく必要がある. また,2022年10月に開催された国際会議ではマイクロプラスチック回収に必要な超高磁場無絶縁マグネットの解析についても報告した.超高磁場下ではマグネットに働く電磁力によりマグネットが動き,鎖交磁場が変化することで望ましくない電流が流れる可能性がある.無絶縁であることから誘導電流はマグネット内部の至る所で環流として現れ,コイル電圧に変化をもたらす.本発表ではこの影響を検討した.結果,外部磁場中のコイル位置変化はコイル外周ターンに大きな電流を誘導することがわかった.また,外部磁場中を移動する影響よりも隣接するコイルの移動による影響の方が大きく,コイル電圧分布の変化も確認された.マグネット安定性の観点からは,誘導電流がコイル外周に誘導されるためコイル移動による熱暴走発生は考えづらいが,外周ターンに線材特性の劣化が存在する場合にはその限りではない.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の一次調査として,シミュレーションによる理想磁場下における海中マイクロプラスチック回収の実現可能性の調査を達成した.結果として海中マイクロプラスチックの超高磁場による回収可能性が示唆された.15 Tもの大きな磁場を1.5 mの長さにわたって生じさせる必要性が明らかになり,今後のマグネット開発ターゲットの一つになることであろう.当初は本調査の妥当性確認のため米国の超高磁場施設に滞在して実験を行う予定であったが,円安及び諸資源枯渇により実験を行うことができなかった. 一方,本調査で明らかになった磁場を達成するためには超電導マグネットの開発を進める必要がある.そこで,超高磁場生成に期待されているREBCO無絶縁マグネットの超高磁場下での振る舞いも調査した.超高磁場では非常に大きな電磁力がマグネットに働き,コイルの位置が微小に変化する可能性がある.これにより外部磁場もしくは隣接内挿コイル磁場との鎖交量が変化し,電圧・電流分布を変化させる恐れがある.数値計算により本影響の検討を行い,コイル外周ターンに大きな電流が誘導されることを確認した.超高磁場コイルではコイル外周ターンの線材特性に大きな特性劣化がないことを確認しなければならない.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の研究よりマイクロプラスチック回収に必要な磁場が大まかに明らかになったことが当年度の大きな成果である.今後はこれを基にして小規模コイルでの実験やシミュレーションモデルの高精度化を目指していく.また,海水およびマイクロプラスチックの磁化率によってシミュレーション結果は大きく変わることからこれら物性値の実験による調査も必要である. これらと並行して超電導マグネットのデザインを並行して行う.海中マイクロプラスチック回収では勾配磁場が必要であり,マグネット間で非常に大きな引力が作用する.補強構造を考慮して,なおかつ高価な超電導線材の使用量を最小化するような超電導マグネットの設計が必要である.さらに超高磁場化も必要不可欠であるため,超高磁場マグネットの限界を決める熱的安定性と機械的振る舞いの調査も今後行っていく予定である.
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