研究課題/領域番号 |
22J20341
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
豊岡 正庸 北海道大学, 文学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | 否定 / 推件計算 / 異なる論理の組み合わせ / 直観主義論理 / 古典論理 / Subintuitionistic logic / 超直観主義論理 / 述語論理 |
研究実績の概要 |
令和4年度は(1)推件計算G(C+J)の述語論理への拡大(2)厳密含意論理+actualityの推件計算の提供の2点が目標であった。(1)については目論見通り拡大が可能であった。述語論理は命題論理よりも表現力が高く、例えば「すべてのxについて・・・」と「あるxについて・・・」という文の関係を表現することができる。この内容はProceedings of the 10th International Conference on Non-Classical Logics. Theory and Applicationsに掲載された。また、G(C+J)を応用し、直観主義論理および古典論理の意味論的性質について、国際鍵であるLENLS19で発表した。また、G(C+J)の先行研究の誤りに気づき、その指摘と修正方法を記載した論文も投稿中である。 (2)については、経験的否定+厳密含意論理/直観主義論理の推件計算の提供のための足掛かりとする予定であったが、これらの論理に対して直接計算を与えることが可能であることに気づき、実際に計算の構成に成功した。さらに、これらの論理の述語論理への拡大も行った。経験的否定は古典論理と似た性質をもつため、経験的否定+直観主義論理は古典論理と直観主義論理の組み合わせとみることができる。また、厳密含意論理は直観主義論理から、意味論的な性質を落としてえられる論理であり、直観主義論理の一般化ということができる。ゆえに、経験的否定+厳密含意論理は古典論理と直観主義論理の一般化の組み合わせとみることができる。経験的否定+直観主義論理およびその述語論理への拡大については国際ワークショップである4th Workshop on Proof Theory and Its Applicationsで発表した。今後はこれらの内容をまとめ、論文として投稿する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、令和4年度から令和6年度までの3年間で以下の(A)(B)(C)の課題に取り組む予定であった。(A)直観主義論理と古典的否定の組み合わせ方の検討(B)直観主義論理の厳密含意論理への一般化(C)古典的否定のド・モルガン否定への一般化。それぞれの課題が2項目に分割されており、各年度2項目づつ研究を遂行する計画である。令和4年度は(A-1)推件計算G(C+J)の述語論理への拡大(B-1)厳密含意論理+actualityの推件計算の提供が予定されている項目だった。もともと(B-1)は以下の二つの項目の足掛かりとする予定だった:(B-2)経験的否定+厳密含意論理の推件計算の提供(A-2)経験的否定+直観主義論理の推件計算の提供。しかし、(B-1)を経由しなくても、(B-2)と(A-2)を直接提供することができると気づき、実際に構成に成功した。ゆえに、(A-1)と合わせて、6項目のうち3項目を行うことができた。さらに、先行研究の誤りの指摘や、意味論に関する哲学的な議論への応用も行うことができた。 一方で、得られた成果や結果を、学会で発表したり、論文として投稿したりする機会を十分に設けることができたとはいいがたい。この点を考慮すると、当初の計画以上に進展しているとはいいがたい。以上の理由から、令和4年度の進行状況を総括すると、おおむね順調に進展しているという判断に至った。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は以下に取り組む。(1)経験的否定+厳密含意論理/直観主義論理の別の仕方での述語化とその推件計算(2)オメガ否定+厳密含意論理/直観主義論理の述語化とその推件計算。(1)については、すでに経験的否定+厳密含意論理/直観主義論理の述語化には成功しているが、これは定領域クリプキ意味論を意味論として持つものであり、これが適切な意味論かは、意見がわかれる点である。通常の直観主義論理は拡大領域クリプキ意味論を意味論としてもつので、拡大領域クリプキ意味論を用いた経験的否定+厳密含意論理/直観主義論理の述語化とその推件計算の提供を行う予定である。存在述語を応用することで、この述語化が可能であるとの見通しを有している。この内容は令和5年11月のAustlarasian Conference of Logicで発表し、Studia Logicaに投稿する予定である。(2)については、当初の計画には含めていなかったが、オメガ否定と呼ばれる否定も、古典的否定と似た性質をもつ。しかしながら、オメガ否定を含む推件計算も述語論理も今のところない。すでに経験的否定+厳密含意論理/直観主義論理の述語化および推件計算の提供には成功しているため、これを応用することで、この課題を達成できると考えられる。この内容はAsian Workshop on Philosophical Logicで発表し、フィードバックをもとにJournal of Logic and Computationに投稿する予定である。 令和6年度は、当初の計画通り(3)幾何学規則+Nelson論理の推件計算(4)Nelson論理の含意の厳密含意化に取り組む予定である。前者については国際学会であるLOGICAで発表し、Reports on Mathematical Logicに投稿する予定である。後者の内容は博士論文に組み込む予定である。
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