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2023 年度 実施状況報告書

複雑流体の流れ制御を可能にする次世代レオロジー基盤技術の開発

研究課題

研究課題/領域番号 22KJ0119
配分区分基金
研究機関北海道大学

研究代表者

大家 広平  北海道大学, 大学院工学院, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2023-03-08 – 2025-03-31
キーワード流体力学 / レオロジー / 流体計測 / 超音波 / 流れ予測 / 複雑流体 / 気泡 / 流動食品
研究実績の概要

本研究では,高分子溶液や混相流体に代表される複雑流体の流れ予測を可能にする新たな理論体系の構築を目的とする.複雑流体のレオロジー計測に高い適用性を持つ流動計測支援型レオメトリを拡張開発し,様々な流れの条件下における物性評価を実現する.そこで得られる物性データを数値計算に活用し,対象流体と流路形状ともに汎用性の高い流れ予測スキームを確立する.
これまでに開発した超音波スピニングレオメトリ(USR)は,試験流体を満たした円筒容器を正弦波状に振動回転させ,超音波流速分布計(UVP)によって内部の時空間流速分布を計測する.この流速情報から運動方程式と構成方程式を介して,実効粘度や粘弾性を評価する.複雑流体に対して高い適用性を持つが,単一周波数成分の振動剪断下での評価に限定されている.
定常剪断や他周波数成分を含む非定常剪断下での物性評価を行うために,昨年度に引続きレオメトリ拡張開発を行った.軸トルク計測が可能な内円筒を取り付けて,UVP計測と同期することで,二重円筒間の各半径位置における歪み速度と応力の対応関係を評価できる.昨年度は定常剪断までであったが,今年度は振動剪断までを扱えるように理論を拡張した.従来のUSRのように構成方程式を必要とすることなく,歪み速度と応力の関係を直接評価できるようになった.
また,USRで得られた粘弾性を数値計算に活用することで,管内の脈動流を再構成し,物性データの流れ予測への適用可能性を示した.また,レオメトリ開発と流れ予測への応用に並行して,これらを非ニュートン性発現の要因解明のための流体物理計測ツールとして習熟させるべく,気泡レオロジー研究に応用した.希薄体積率条件において,粘弾性を3つの無次元数で体系化できることを示し,研究成果はJournal of Fluid Mechanicsにて発表した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

レオメトリ拡張開発については,軸トルク計測が可能な内円筒を挿入することで,壁面応力の計測が可能となる.また,UVP計測を同期することで,二重円筒間の時空間流速分布が得られる.これを運動方程式に代入して壁面応力を境界条件として解くことで,各半径位置での歪み速度と剪断応力の時間応答が評価できる.昨年度は定常剪断,今年度は振動剪断を扱った.手法の妥当性検証として,シリコンオイルとカルボキシメチルセルロース水溶液の計測を行い,標準的なレオメータと一致することが確認できた.また,従来手法では計測対象外となるO(100μm)サイズの粒子を含む懸濁液の計測に適用し,理論式と一致する結果が得られた.この流動計測支援型レオメトリは,従来のUSRに比して10倍ほど精度が高く,今後の混相流体レオロジーでの運用が期待できる.また,USRのように構成方程式を必要としない点も強みである.複合周波数の成分を含む非定常剪断下でのレオロジー物性評価に運用できる.
流れの予測に関しては,USRで評価した粘弾性データを用いて,管内の脈動流を予測することを試みた.シェアシニング性流体としてカルボキシメチルセルロース,粘弾性流体として知られるポリアクリルアミド水溶液を扱い,予測と実験の一致が確認できた.流動物性データの可逆性が確認でき,流路の幾何条件をより複雑にする今後の研究に向けた足掛かりとなる.
以上の研究で開発したレオメトリおよび流れ予測スキームを,非ニュートン性発現の要因解明のための流体物理計測ツールとして気泡レオロジーに応用した.気泡懸濁液バルクとしての粘弾性は,気泡の変形能を表すキャピラリー数,変形の非定常性を表す動的キャピラリー数,および体積率で体系化されることを理論で示し,実験にて検証を行った.

今後の研究の推進方策

流動計測支援型レオメトリにおいて物性評価を行う流れ場の複雑化と,そこで得られるレオロジー物性を複雑流路での流れ予測に活用することを同時に進める.平均流と振動流を組み合わせた流れ場,および二周波数成分以上を含む振動流れでの歪み量,歪み速度および剪断応力を今年度開発した流動計測支援型レオメトリにより評価する.得られたレオロジー物性データを流れの予測に活用する.直円管については既に定常流と脈動流の流れ予測に成功しており,次の対象として,レデューサ管とエルボー管を扱う.これにより,少量のサンプルを流動計測支援型レオメトリによって計測するだけで,例えば大規模パイプラインの流れ予測が実現できる.これまで対象とした直円管は軸方向流れが支配的であるのに対し,これらの管内では三次元的な流れが発生する.数値計算の妥当性検証のために,透明樹脂製のレデューサ管とエルボー管をパイプラインに組み込み,粒子画像流速測定法によって獲得する流速分布と比較する.試験流体は,ニュートン流体としてシリコンオイル,シェアシニング流体としてカルボキシメチルセルロース,粘弾性流体としてポリアクリルアミド水溶液を扱う.

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 4件)

  • [国際共同研究] The University of Manchester(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      The University of Manchester
  • [雑誌論文] Rheology of dilute bubble suspensions in unsteady shear flows2024

    • 著者名/発表者名
      Kohei Ohie, Yuji Tasaka, Yuichi Murai
    • 雑誌名

      Journal of Fluid Mechanics

      巻: 983, A39 ページ: 1-11

    • DOI

      10.1017/jfm.2024.171

    • 査読あり
  • [学会発表] 超音波インラインレオメトリによる「おかゆ」の擬塑性変化モニタリング2024

    • 著者名/発表者名
      大家広平,芳田泰基,田坂裕司,村井祐一
    • 学会等名
      日本化学工学会第89年会
  • [学会発表] Rheology of a dilute bubble suspension in unsteady shear flows2023

    • 著者名/発表者名
      Kohei Ohie, Yuji Tasaka, Yuichi Murai
    • 学会等名
      76th Annual Meeting of the Division of Fluid Dynamics
    • 国際学会
  • [学会発表] Flow prediction of complex fluids using rheometry coupled with ultrasonic velocity profiler2023

    • 著者名/発表者名
      Kohei Ohie, Taiki Yoshida, Yuji Tasaka, Yuichi Murai
    • 学会等名
      14th International Symposium on Ultrasound Doppler Methods for Fluid Mechanics and Fluid Engineering
    • 国際学会
  • [学会発表] 振動剪断流れにおける希薄気泡懸濁液の粘弾性解明2023

    • 著者名/発表者名
      大家広平,田坂裕司,村井祐一
    • 学会等名
      日本流体力学会年会2023
  • [学会発表] Velocity-profiling-based rheometry along the food value chain from production to digestion of complex fluid food2023

    • 著者名/発表者名
      Kohei Ohie, Taiki Yoshida, Yuji Tasaka, Yuichi Murai
    • 学会等名
      International Symposium on Food Rheology and Structure 2023
    • 国際学会
  • [学会発表] 流動計測支援型レオメトリによる食品開発・製造のDX推進2023

    • 著者名/発表者名
      大家広平,芳田泰基,田坂裕司,村井祐一
    • 学会等名
      第46回日本バイオレオロジー学会年会
  • [学会発表] Complex viscosity of dilute bubble suspensions in unsteady shear flows2023

    • 著者名/発表者名
      Kohei Ohie, Yuji Tasaka, Yuichi Murai
    • 学会等名
      The 11th International Conference on Multiphase Flow
    • 国際学会

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公開日: 2024-12-25  

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