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2023 年度 実施状況報告書

光導波路分光装置を用いた飲料水中の高感度病原微生物モニタリング法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 22KJ0123
配分区分基金
研究機関北海道大学

研究代表者

中島 芽梨  北海道大学, 大学院工学院, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2023-03-08 – 2025-03-31
キーワードバイオセンサ / 金ナノ粒子 / ハイブリダイゼーション / 光導波路 / 病原体 / SARS-CoV-2 / RNA
研究実績の概要

SARS-CoV-2の検出は、新型コロナウイルス感染症の蔓延状況を把握するための下水疫学調査において行われており、医学分野のみならず環境工学分野においても注視すべき病原体である。我々が開発した、光導波路分光装置を用いて低濃度の核酸を検出する「光導波路法」を改良し、実サンプル中のSARS-CoV-2ゲノムRNAの検出を試みた。初めに、実験条件や装置の設定条件について検討を行った。人工合成したゲノムRNAサンプルを用いて検出を行ったところ、ポジティブサンプルでは散乱光強度が増大し、SARS-CoV-2のゲノムRNAを1 copies/μLまで検出可能であった。また、SARS-CoV-2のゲノムRNAを含まないネガティブサンプルでは散乱光強度の増大はみられず、光導波路法はSARS-CoV-2のゲノムRNAを検出可能であることが確認できた。従来法(RT-qPCR法)により陽性または陰性と診断された臨床サンプルを用いて分析を行ったところ、光導波路法は散乱光強度とピーク波長の違いから従来法と同様に陽性と陰性を判別することができた。検出限界は、これまでに報告されている酵素を用いた前増幅などを行う分析法とほぼ同程度であり(30 copies/μL)、非常に高感度であった。また光導波路法は、これまでに報告されている酵素を必要とする分析法と同等の検出下限を示しながらも、高価な試薬や酵素、サーマルサイクラーなどの装置を必要とせず、5分程度で分析が完了するため、コスト、分析に要する時間、簡便さの点において非常に優れていた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

光導波路法を用いて、人工合成したSARS-CoV-2ゲノムRNAだけでなく、実サンプル(臨床サンプル)中の非常に低濃度なゲノムRNAも検出することができた。よって、光導波路法は、環境工学分野における水質分析のみならず、医学や農学分野における簡易迅速診断やオンサイトモニタリングへの応用も期待できる。また、SARS-CoV-2以外にも水系感染症の原因となる微生物の検出にも成功しており、当初の計画以上に進展していると考えている。

今後の研究の推進方策

引き続き水系感染症の原因となる病原体や、糞便汚染や下水処理性の指標となりうるトウガラシ微斑ウイルス(PMMoV)などの検出を目指し、それぞれについて分析プロトコルの確立を行う。
また、光導波路法を含め我々が開発した金ナノ粒子プローブを用いた核酸分析法は、使用する検出プローブの一本鎖DNA配列を変更する、あるいは特定の物質と特異的に結合するアプタマーなどを検出プローブとして使用することで、様々なターゲット(DNA、RNA、タンパク質、菌体など)を検出することができる。水処理システム中の微生物やウイルスを検出対象とし、複数種のDNAやRNA、タンパク質、菌体などの他項目同時分析が行えるよう、我々が開発した金ナノ粒子を用いた核酸分析法とマイクロプレートリーダーによる光学的分析を組み合わせた分析法の開発に取り組み、網羅的な微生物や病原体モニタリング法の確立を目指す。

次年度使用額が生じた理由

分析に使用するサンプルの一部について、共同研究先から抽出・精製済のものを提供いただいたため、核酸抽出キットなど微生物の遺伝子解析のための物品購入に係る支出額が当初の想定を下回った。
次年度使用額については、当初の通り微生物の遺伝子解析のための物品費として支出予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] Analysis of Unamplified 16S rRNA of Ammonia-Oxidizing Bacteria in Activated Sludge by Spectrophotometry Using Gold Nanoprobes2023

    • 著者名/発表者名
      Meri Nakajima, Reiko Hirano, Yuki Nakaya, and Hisashi Satoh
    • 雑誌名

      ACS ES&T Water

      巻: 3 ページ: 3113, 3120

    • DOI

      10.1021/acsestwater.3c00265

    • 査読あり
  • [学会発表] Analysis of unamplilfied 16S rRNA of ammonia-oxidizing bacteria in activated sludge by spectrophotometry using gold nanoprobes2023

    • 著者名/発表者名
      Hisashi Satoh, Meri Nakajima, Yuki Nakaya
    • 学会等名
      18th IWA Leading Edge Conference on Water and Wastewater Technologies
    • 国際学会
  • [学会発表] Development of simple assays for direct RNA quantification using oligonucleotide-modified gold nanoparticle probes2023

    • 著者名/発表者名
      Meri Nakajima, Hisashi Satoh
    • 学会等名
      0th International Water Association Microbial Ecology and Water Engineering Specialist Conference
    • 国際学会
  • [学会発表] 金ナノ粒子プローブを用いた環境中微生物の簡易分析法2023

    • 著者名/発表者名
      中島芽梨,中屋佑紀,佐藤久
    • 学会等名
      第26回日本水環境学会シンポジウム
  • [産業財産権] 微生物の核酸検出方法,試薬キット,測定システム,及びプログラム2023

    • 発明者名
      中島芽梨
    • 権利者名
      中島芽梨
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      2023-68156

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公開日: 2024-12-25  

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