研究課題/領域番号 |
22KJ0124
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
李 采訓 北海道大学, 大学院総合化学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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キーワード | DDS / nanoparticle / micelle / self-assembly |
研究実績の概要 |
化学的に異なる二つのセグメントが共有結合で繋がったブロック共重合体 (BCP) は自己組織化によって固体状態ではナノスケールの周期を有するミクロ相分離構造、溶液状態では球状やワーム状などのミセルを形成する。BCP の固体および溶液状態における自己組織化ナノ構造はリソグラフィーマスクやポーラス材料合成、薬物送達システム、食品分野など広い応用用途で注目を集めている。本研究では、持続可能なナノテクノロジー分野の発展を目指し、微細で多様なモルフォロジーを容易に構築可能な新規バイオベース材料の開発を目的とする。具体的には、バイオベースなオリゴ糖鎖とテルペノイドの組み合わせによりブロックコオリゴマー (BCO) を合成し、その分子構造と自己組織化挙動の相関を理解することで多様な超微細ミクロ相分離構造およびミセル状会合体の構築を目指す。 そこで、親水性セグメントに重合度 1-7 のマルトオリゴ糖鎖を、疎水性セグメントにソラネソールやトコフェロールなどの天然由来炭化水素を組み合わせることで糖鎖含有 BCO ライブラリを構築した。また、オリゴ糖鎖と炭化水素鎖を繋ぐ結合部位の影響を調べるため、様々な化学構造のリンカーを導入した。得られた糖鎖含有 BCO に対してシンクロトロンでの小角 X 線散乱および斜入射小角 X 線散乱実験を行うことで固体および薄膜中でのミクロ相分離構造を詳細に調べた。その結果、幅広い糖鎖含有 BCO ライブラリを体積分率およびアニーリング温度条件に従った相関関係を明らかにし、一部の特殊な自己組織化挙動解析結果について GIANT 誌へ投稿した (DOI: 10.1016/j.giant.2023.100211)。次に、水溶液状態での動的光散乱法測定および透過型電子顕微鏡観察からミセル状会合体の形成を確認したため、薬物を挿入したミセルを調製している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では既存の LNP よりも高い機能性および安全性を獲得するため、多様な親水性 (重合度 1-7 のオリゴ糖鎖) および疎水性 (ソラネソールやトコフェロールなど) セグメントを組み合わせた両親媒性ブロックコオリゴマーの合成法の確立およびライブラリ作成を行った。また、様々な光学測定で化学構造を詳細に調べた。さらに、シンクロトロンを用いた小角 X 線散乱測定から固体状態での多様なモルフォロジーを解析することで化学構造との相関を明らかにした。次年度には、動的光散乱法測定および透過型電子顕微鏡観察から動的光散乱法測定および透過型電子顕微鏡観察から溶液状態でのミセル状会合体を詳細に解析する予定である。そのため、機器分析講習や消耗品購入を計画的に行っている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はこれまで合成してきた糖鎖 BCO の水溶液中におけるミセル化挙動を中心に検討する。BCO が水に直接溶解可能な場合は直接溶解法によりミセルを調製する。また、水に直接溶解しない場合は糖鎖体積分率に応じた有機溶媒と水の混合溶媒に溶解させ、これを水に滴下してミセルを形成するナノ沈殿法を採用することで多様な濃度のミセル水溶液を用意する。BCO 水溶液に対して DLS 測定を行い、各濃度によるナノ粒子のサイズおよび安定性を評価する。次に、ナノ粒子をウラニルアセテートでネガティブ染色することで TEM 観察を行い、実際のミセルのモルフォロジーを確認する。さらに BCO の化学構造と体積分率から予想される充填パラメータと DLS 測定および TEM 観察から得られたモルフォロジーとの相関を解明することで、テーラーメイドなミセルの構築を目指す。
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