研究課題/領域番号 |
22J21461
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
植村 洋亮 北海道大学, 地球環境科学研究院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | 温暖化 / 気候変動 / 絶滅危惧種 / 種間競争 / サケ科魚類 |
研究実績の概要 |
気候変動にともなう広範囲の個体群絶滅リスクは主に分布予測によって評価されてきた。しかし、それらの予測とその後に実際生じた絶滅を種の分布域全体で比較した研究は非常に少ない。今から約30年前に、北海道を分布域とするサケ科魚類オショロコマの温暖化に伴う個体群絶滅モデルが提唱された。このモデルは温暖化により気温が1°C上昇した場合に北海道全体で28%、2°Cでは67%の地域個体群が消失すると予測した。しかし、どれだけのオショロコマ個体群が存続しているのかは不明である。また、オショロコマの生息域には現在、競争種となりうる複数の在来種・外来種が分布することが知られている。
そこで、過去の研究においてオショロコマが単独または他種と同所的に生息する地点が比較的多く存在した、道東地域の河川で電気ショッカーによる採捕調査を2022年7月に行った(過去にオショロコマの生息が確認されている37地点を含む13水系52地点)。また、各地点では物理環境測定とロガーによる水温測定を行った(7月から10月)。
その結果、過去の研究でオショロコマが単独または他種と同所的に生息していた6水系27地点について、実際にオショロコマが生息していなかったのはそのうち3地点であった。一方、22地点ではヤマメ、7地点ではイワナ、5地点では外来種ニジマスが新たに見られた。また、西別川水系の9地点では1地点のみ種組成が変化せず(オショロコマ・イワナ)、8地点でイワナやヤマメ、ニジマス、カワマスが新たにみられた。また、8地点のうち2地点ではオショロコマは見られなくなった。したがって、北海道東部の河川では温暖化に伴いオショロコマの個体群は消失しつつあり、その要因として競争的な関係にある在来種の分布拡大のみならず外来種による置き換わりもあると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた調査地点数を超える調査地点でサンプリングを実施できた。また、得られた成果を含む研究内容を2つの国内学会と1つの国際学会で発表できた。したがって、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
道内で過去にオショロコマが確認された個体群のうち未調査の地点で継続的にサンプリングを実施する。また、それらのデータを解析するとともに、温暖化の長期的なインパクトを明らかにするために長期データの解析にも着手する。そして、得られた成果は国際学会を含む学会で適宜発表し、最終的に国際誌への投稿を目指す。
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