研究課題/領域番号 |
21J23513
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
Chen Xing 帯広畜産大学, 畜産学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | ゼブラフィッシュ / 環境化学物質 / エストロゲン様作用 / 抗アンドロゲン様作用 / 発達神経毒性 / ビスフェノール類 / 農薬 |
研究実績の概要 |
本研究は、環境化学物質の低濃度曝露による発達神経毒性とその作用機序解明を目的とする。令和3年度は主に以下の成果を得た。 (1)ゼブラフィッシュ胚を用いて抗アンドロゲン様作用を評価するアッセイ系の開発を試みた。このため、アンドロゲン受容体標的遺伝子であるsult2st3を指標として、他アッセイ系で抗アンドロゲン様作用が報告されているモデル化合物5種についてテストステロン誘導性sult2st3発現の抑制能を評価した。その結果、5種いずれの化合物も濃度依存的にsult2st3発現を抑制した。用量効果(IC50)より推定した抗アンドロゲン様作用は、p,p'-DDE(0.35 uM)> ビンクロゾリン(3.9 uM)> フルタミド(5.7 uM)> リニュロン(52 uM)> フェニトロチオン(NA)であった。これらの結果より、抗アンドロゲン剤(陽性対照)であるフルタミドより強い抗アンドロゲン様作用をゼブラフィッシュ胚に対して示す環境化学物質が存在することが示唆された。とくにp,p'-DDEについては、マラリア駆除目的で現在もDDTが使用されているアフリカ諸国の環境水中濃度と同等もしくはそれよりも低濃度で抗アンドロゲン様作用を示すことが明らかとなった。 (2)ビスフェノールA(BPA)および多様なBPA代替物質について、上記で開発したin vivo評価系を用いて抗アンドロゲン様作用を評価した。Sult2st3発現抑制に関する用量効果(IC50)より推定した抗アンドロゲン様作用は、BPAF(0.53 uM)> BPE(3.7 uM)> BPA(4.7 uM)> BPF(12 uM)となった。 また、BPB・BP C2・2,2'-BPF・Bis-MP・BPZについても、10 uMで顕著なsult2st3抑制作用を示したことから、抗アンドロゲン様作用を有することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理由は以下のように要約され、得られた結果は1年目の研究成果としては十分で、おおむね順調に進展していると判断した。 1) ゼブラフィッシュ胚を用いて、アンドロゲン受容体を介した抗アンドロゲン様作用のin vivo 評価系を確立した。 2) 確立した評価系を用いて、これまでに抗アンドロゲン様作用が報告されている代表的な農薬と、BPAおよび多様なBPA代替物質について、抗アンドロゲン様作用の用量効果・最大効力を明らかにした。 3) ビスフェノール類の抗アンドロゲン様作用とエストロゲン様作用の相関性は低いことを示唆した。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は以下の研究を推進する予定である。 エストロゲン様作用と抗アンドロゲン様作用がそれぞれ強かったビスフェノール類について、曝露胚の行動解析や神経活性マーカーの測定を行うことで、発達神経毒性を評価する予定である。さらに、前年度までに確立したin vivo 評価系を用いて、多様な環境化学物質のエストロゲン様作用と抗アンドロゲン様作用を評価するとともに、その結果を踏まえて発達神経毒性の評価も進める予定である。なお、既に取得済みのデータについては、国内・国際学会にて発表するとともに早期に論文化して公表する予定である。
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