研究課題/領域番号 |
19J00864
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
笠田 実 東北大学, 生命科学研究科, 特別研究員(CPD)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2024-03-31
|
キーワード | 個体群動態 / 数理モデル / プランクトン |
研究実績の概要 |
本来行う予定であった実験系の研究は、コロナ禍とロシアのウクライナ侵攻の影響により内容を変更せざるを得なかった。そのため研究を実験から理論、データ解析にシフトし、微分方程式を利用した数理モデルにより、動物プランクトン、植物プランクトンおよび植物プランクトンに寄生するツボカビからなる生態系の、生物の適応進化と個体群動態の関係を調べた。その結果、植物プランクトンが動物プランクトンとツボカビに対して異なる進化応答を示す場合、動物プランクトンとツボカビが、予想されるような競争的な関係だけでなく、パラメータ条件によっては、お互いがよりよく成長するような協力的な関係となることがわかった。この成果はDynaTrait Annual Meeting 2021において発表された。さらに、湖沼の微生物生態系が、環境変化によって相互作用をどのように変化させるかを調べる実験システムの設計および構築を行なった。そのほか、主に生物の分布パターンを決定づける環境要因の分析において貢献した、共同研究を行いその成果が国際誌に出版された。また、生態系保全・管理において個体群密度を減らすための形質適応の制御に関する新しいアイディアをまとめた論文をEcological research誌おいて発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度末からのコロナ禍の影響により、生態学会年会を含む複数の学会等がキャンセルされ、当該年度の発表の機会が失われてしまった。また、研究所の閉鎖により、一時期全ての研究活動を行うことが困難になりデータの取得、解析を予定通り行うことができなかった。また、ロシアのウクライナ侵攻のヨーロッパへの影響も大きく、2021年、2022年は、滞在先の研究機関のあるドイツと日本の間の航空便配送が全てストップし、予定していた実験系の研究機材の搬送が不可能になり、十分に研究を行うことができなかった。そのため、2020年度、2021年度、2022年度の繰越申請を行った。そのような状況の中で、実験研究から理論モデルの研究にシフトすることによって、生物の補食被食と宿主寄生の両方を含んだ群集の適応進化の知見について一定の成果を上げることができた。これにより、2022年度までの当初予定していた研究計画から内容を少し変更せざるを得なかったものの、同等の成果を得ることができた。よって、これまでの研究の遅れは取り戻せたと考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後はこれまでの研究を引き継ぎつつ、得られた研究成果を学会、および論文等で発表していくことを主な研究活動とする。また、国際的に活躍する研究者の後進育成等に寄与するため、国際競争力強化研究員として、3年以上ドイツライプニッツ研究所で研究活動を行ってきた経験を、セミナー等を通じて国内に還元することを行なっていく。そして最終年の総括として、これまでの研究成果をどのように社会に活かすことが可能であるかについて考察する。一方で、前年度行った環境DNAデータの解析を引き続き続けていく。この研究により時空間的な生物多様性のパターンが日本全体でどのようになっているかを明らかにする。具体的には、環境DNAデータはANEMONE(All Nippon eDNA Monitoring Network)データベースから取得し、統計モデルを用いて解析を行うことによって、日本沿岸の魚類多様性の時空間パターンについて調査する。これにより、日本の魚類における生物多様性の現状について把握することが可能となる。また、環境DNAデータ以外のデータベースから得られるデータも組み合わせて解析することで、生物多様性の時空間的なパターンと様々な環境パラメータの関係について調べていく。
|