データ解析からモデルを作るデータ駆動的なアプローチを発展させる研究提案を実施した。複雑な流体現象の近似モデルの構築・最適化された少数のセンサによる観測系を組み合わせて、効率的な現象観測手段の開発を目指した。 最終年度となる2023年度に新たに取り組んだ項目は以下の二つに大別される。 1. 流れの低次元な動的モデルを少数のセンサ観測から構築する手法の開発 2. 上記の項目1を効率的に行うセンサ位置の最適化手法の開発 項目1では前年度より検討していた、動的モード分解と圧縮センシングを組み合わせる既存の方法を改良するアプローチをとった。流れの空間構造が持つ基礎的な特徴を事前情報(構造スパース性)として与えることで、圧縮センシングの解探索が効率的に行えることを示した。また、様々な特徴を重ね合わせ的に用いる定式化を提案した。国内学会への発表を2件行い、学会誌論文への投稿準備は今後進める。項目2に関しては、これまで行ってきたセンサ計測の位置最適化の枠組みを圧縮センシングでの利用に拡張した。圧縮センシングのパラメータ感度を最大にする事前最適化と推定されたパラメータの不確かさに着目した事後最適化の二つを行い、ランダムに配置する一般的な方法より少ない計測量でパラメータを求めた。上記の項目1と併せて、研究成果の公開を進めている。 以上より、流体現象の効率的な観測手段の基盤部分の開発・検証を完了し、研究提案で設定した目標の一つをおおむね達成した。一方で、非常に単純な流体現象に対するテストのみ実施できていること・当初目標としていた制御項ありのモデルの構築が達成できていないことなど、今後の解決が必要な課題も認識している。
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