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2022 年度 実績報告書

系統特異的ゲノム配列に着目したヒレから四肢への形態進化研究

研究課題

研究課題/領域番号 21J21343
配分区分補助金
研究機関東北大学

研究代表者

工藤 栄大  東北大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2021-04-28 – 2024-03-31
キーワードヒレから四肢への進化 / ゲノム比較 / 四足動物 / 四肢 / 魚類 / ヒレ / Enrichment解析
研究実績の概要

本研究は、ヒレから四肢への進化に関わったゲノム変化を明らかにすることを目的として、四足動物特異的ゲノム配列が持つ機能を解析するという内容である。本研究は3つの段階に分けられる。1段階目が四足動物特異的な高度保存配列(HCEs)の特定、2段階目が四肢の発生に関わるゲノム配列の選抜、3段階目が実際の動物を使った候補配列の機能解析である。
令和4年度の1年間では、前年までに申請者が特定した四足動物特異的なHCEs26,094個について、2段階目の四肢発生中に役割を持つ可能性が高いゲノム配列の選抜を行った。ここでは、すでに発表されているシークエンスデータを用い、四肢発生に関連する四足動物特異的なHCEsの選抜を行った。具体的には、マウスの発生前期と後期の四肢のDNase-seqデータを用いた。このうち、発生前期にクロマチン構造がオープンになっていて、かつ後期にはクローズになっているHCEs(A)を選抜したところ、88個が選抜され、四肢発生関連のGO TermがEnrichされた。さらに、それらのHCEsがヒトの四肢や指の疾患に関わることも示唆された。また、四肢の発生後期のみクロマチン構造がオープンになるHCEs(B)は、166個選抜され、こちらも四肢発生関連のGO TermがEnrichされた。一方で、前期と後期両方でオープンになっているHCEs(C)は、58個が選抜され、四肢関連のGO Termや、四肢疾患に関わるTermはEnrichされなかった。この発生中に一貫してオープンな領域については、ハウスキーピングの役割を果たしていると考えられる。以上のことから、発生中の遺伝子発現を時空間的に調節することで、四肢の形態が成立するに至ったことが示唆される。
現在は、A>Bの優先順位で3段階目の実際の動物を用いた機能解析を行う準備をしている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

四足動物特異的ゲノム配列の解析に関しては、やや遅れている。理由は、解析の一部に問題があることが発覚したため、そのやり直しを行っているためである。また、申請者が学部のころから進めてきた研究のまとめのために時間を割く必要があり、こちらの解析が停止してしまっていたためである。
魚類特異的なゲノム配列の解析に関しては、遅れている。理由は主に以下の3つである。1つ目は魚類の解析の優先順位の低下である。魚類は世代時間が短く、短時間で比較的多くの実験ができるが、四足動物は魚類と比べて遺伝的な実験に時間がかかる。そのため、四足動物を優先して解析することにした。2つ目は、ゲノム配列の比較に用いるハイギョとアホロートルのアラインメントがうまくできなかったからである。この2種はヒトのおよそ8~12倍のサイズのゲノムを持っている。また、反復配列の割合も多く、ほかの動物種のアラインメントと同じパラメータではアラインメントができなかった。ゲノムを分割するなどの方法を試したが、計算が終了しなかったため、これらを解析に用いるのは断念した。3つ目は本研究の着想のもととなった研究の遅れによるものである。論文化を目指して実験を行っていたが、地震による実験に用いる稚魚や成魚の死亡による遅れによって飼育スペースを圧迫しており、生体を用いた新たな実験を進められない状況となっている。

今後の研究の推進方策

まず、問題があった解析の箇所を早急に解決する。その後、以下の3つを行う。
(1)遺伝子発現データとの比較:上記の候補領域のうち、その活性化状態と、近傍遺伝子の発現量の増減が一致するものを選抜する。これによって、実際にそのCNEが、「発生時期特異的に」近傍の遺伝子の発現を制御していることをより強く裏付けることができ、これ以降の解析の候補としてより有望なものになると考えられる。
(2)ヒト疾患データとの比較:ここまでの解析で得られた候補CNEsについて、ヒトのGWAS解析のデータと比較する。具体的には、GWAS解析によって既に得られているヒトの四肢や指の形態に関わると考えられるゲノム領域と、本解析で得られる領域が一致している場合、そのCNEは四肢や指の形態形成に強くかかわっていると考えられる。
(3)生体を用いた機能解析実験:上記で明らかになった候補配列の機能を、両生類やマウス、ゼブラフィッシュ胚を用いて検証する。具体的には、両生類胚やマウス胚において、CRISPR/Cas9システムなどを用いて、候補配列に変異を引き起こすことで機能欠損実験を行う。これによって四肢の発生や形態に違いが生まれるかを、検証する。また、飼育スペースが空き次第、ゼブラフィッシュ胚のゲノム中に、その配列を挿入し、レポーターアッセイを行う。進化の過程で起こったゲノム変化を再現した結果、遺伝子の発現も四足動物様の発現に変化するのかを検証する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2022

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 四足動物特異的な保存ゲノム配列の解析2022

    • 著者名/発表者名
      工藤栄大、米井小百合、牧野能士、阿部玄武、田村宏治
    • 学会等名
      日本動物学会第93回早稲田大会

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公開日: 2023-12-25  

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