研究実績の概要 |
本研究は、ヒレから四肢への進化に関わったゲノム変化を明らかにすることを目的として、四足動物特異的ゲノム配列(HCEs)が持つ機能を解析するという内容である。 まず、系統特異的なHCEsの特定を行った。この過程では、魚類(軟骨魚類、上記類、肉鰭類)6種類、四足動物(両生類、は虫類、哺乳類、鳥類)14種類のゲノムを用いた。解析はSeki et al. (2017)を参考としてマルチプルアラインメントおよび保存領域の抽出を行った。四足動物でのみ保存されている配列を取得したところ、四足動物全体で保存されたHCEsは103,216個存在し、そのうち四足動物特異的なHCEsは合計27,304個存在することが明らかとなった。このうち、非エキソン領域に存在するHCEs(CNEEs)は四肢を含む器官発生に関わる遺伝子の近傍に多く存在していることを明らかにした。 次に、既存のATAC-seqデータを用いて、発生中の四肢においてクロマチン構造が変化するCNEEsを選抜した。このうち、四肢発生の初期でのみクロマチン構造がオープンなCNEEsは、四肢発生に特に強く関わっている可能性を示した。また、これらの領域にはHomeobox因子と結合するモチーフ高い割合で含まれていた。 本研究で得られたCNEEsは四肢を持つ動物において広く保存されている配列であることから、これらの配列の中には四足動物の形態進化に強く関わったものが含まれている可能性がある。これらの配列について詳細な研究を行うことで、四足動物の形態進化を引き起こしたゲノム配列の変化を明らかにすることができると考えられる。また、今回得られた配列はヒトにも存在する配列であることから、これらの配列はヒトの疾患の診断にも応用できると考えられる。
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