研究実績の概要 |
ポストSiテクノロジーを担う次世代不揮発性メモリとして、相変化メモリが注目されており、通常、相変化材料のアモルファス相と結晶相の大きな抵抗差を利用して情報を記録する。従来のアモルファス/結晶相変化型に対し、アモルファスを介さない結晶間多形変化を示すMnTeは高速かつ省エネルギーを実現する革新的材料である。しかし、MnTeの実用デバイス化には①準安定β-MnTeの電気特性が不明であること、②MnTeが電気・光学特性変化を示す多形変化温度は450℃以上と高く、デバイス製造には不向きであること、③β-α相間の初期体積変化が非常に大きく、ボイド生成を引き起こすため繰返し特性の劣化の原因になるといった課題が残されている。本研究では、β-MnTe薄膜における電気特性の温度依存性などを調べ、電気伝導機構を明らかにした。また、②と③の解決のために準安定β相の相安定性制御を目的とし、第三元素Crを添加した。 CrxMn1-xTe三元系薄膜を成膜し、Cr添加による相変化挙動の変化を調べた結果、特定組成領域では、MnTe二元系よりも極めて低い200℃付近から電気抵抗変化を示す事が分かった。さらに、CrxMn1-xTe薄膜の密度や膜厚変化(< 5 %)はMnTe(>20%)に比べて大きく低減され、②と③の課題が両方改善された。一方で、このCrxMn1-xTe薄膜は結晶構造がβ相を維持しているのにも関わらず、多段階的な抵抗変化を示すことを発見した。この同じ結晶構造での抵抗変化はMnTeでは得られない特性であり、物性変化の起源はHAXPESやEXAFS,HR-TEMなどよりCr含有効果による価数・局所的な配数変化に起因することがわかった。さらに、このCrxMn1-xTe薄膜は高速かつ不揮発な抵抗スイッチングが可能であることを実証し、不揮発性メモリへの応用可能性が確認された。
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