研究課題/領域番号 |
21J21766
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
住 拓磨 東北大学, 医工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 培養神経回路 / 生体情報処理 |
研究実績の概要 |
本研究は,培養神経回路に基づく新しい in vitro 実験系を構築し,損傷印加前後の神経活動パターンを自発活動および入力応答の観点から解析することによって,実神経細胞ネットワークの損傷耐性の発現メカニズムを明らかにすることを目的としている.2年目であるR4年度では,昨年度構築した神経回路網の入出力測定を行うための培養神経レザバーシステムを用いて,時系列信号(発話数字データ)を入力し,それを分類するタスクにより神経回路の信号処理の特徴を調べた.その結果,培養神経レザバーシステムは,チャンスレベルより高い性能で時系列信号を分類でき,特に神経ダイナミクスが入力クラスに応じて異なるダイナミクスを生成するとき,および,神経回路が機能的にモジュラーな接続性を有するときに性能が高くなることが示された.この結果については,9月に論文投稿を行った.年度の後半ではバルセロナ大学のJ. Soriano准教授の研究室に滞在し,神経回路網の損傷修復特性を調べる実験に取り組んだ.培養神経回路を切断し,その修復過程について神経回路の機能的な結合を基に評価した結果,損傷印加直後では機能的結合性に混乱が生じるが,24時間後には元の結合性を回復させることが分かった.このような機能の修復機構は,シナプスの自己組織的な相互作用に基づくと考えられ,数理モデルとして記述することを通じて,損傷に対してロバストな情報処理モデルの提案へと結びつけることができると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目では神経回路の定常時および損傷時の入力応答パターンの特徴を,レザバー計算で用いられる動的システムの性能評価指標に基づいて評価することを目標としていたが,定常時の神経回路では達成されたものの、損傷時については達成されていない.一方で,3年目に予定していたバルセロナ大学で行う研究について2年目に前倒しで実施することができた.
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今後の研究の推進方策 |
本年度に得られた培養神経回路網の修復過程について,数理的に記述するモデルを構築するとともに,その機能についてレザバー計算の手法を応用し,時空間信号入力の分類課題を通して情報処理能の観点から評価する.
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