研究課題/領域番号 |
21J21873
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大竹 慎司 東北大学, 歯学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 歯の発生 / エナメル質 / エナメル芽細胞 / 石灰化機構 |
研究実績の概要 |
歯の表層に存在するエナメル質は生体内で最も硬い構造物である。歯の発生において歯原性上皮細胞から分化したナメル芽細胞は、基質分泌期、移行期、成熟期と分化してカルシウム等が石灰化することによって、エナメル質が形成することが知られている。我々はエナメル芽細胞の分化において、分化の方向を決定づけるSox21、石灰化に重要なGpr115、エナメル基質分泌に重要なAmbnを明らかにした。しかし、エナメル芽細胞の分化度による機能の変化、in vivoと同様の効率的なエナメル質形成技術は解明されていない。本研究では、エナメル芽細胞で発現している分化制御を行うターゲット分子として、カルシウム結合ドメインを有し、カルシウムイオン輸送に関与しているS100ファミリーに注目した。その中でもシングルセルRNAシークエンスおよびマイクロアレイを用いた網羅的解析によりS100a6をターゲット分子とし、エナメル芽細胞の分化機構への影響を解明し、効率的なエナメル質形成技術の確立を目標としている。 in vivoでは、S100a6免疫染色において胎生13,15日及び生後1,7日齢マウス臼歯歯胚のうち生後マウスで発現し、エナメル質に接するエナメル芽細胞に局在を認めた。6週齢マウス切歯歯胚では、エナメル芽細胞の分化時期において発現部位の変化を認めた。 in vitroでは、ラット歯原性上皮において歯原性上皮細胞からエナメル芽細胞へ分化誘導した場合、S100a6の発現部位に変化を認めた。更に、Fアクチン染色において歯原性上皮細胞からエナメル芽細胞へ分化誘導すると、細胞質だけでなく細胞膜付近で強く発現していた。 以上から、S100a6はエナメル質の石灰化や細胞遊走に関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度では、in vivoでの免疫染色においてエナメル芽細胞の分化時期の違いがS100a6の発現部位に変化をもたらすことからS100a6が歯胚における石灰化に関与している可能性が示唆された。in vitroでの免疫染色やFケラチン染色において、歯原性上皮細胞からエナメル芽細胞への分化で発現部位が変化することから、エナメル芽細胞への分化や細胞遊走に影響を与えていることが考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度では、より詳細なエナメル芽細胞分化への影響を検討する。歯原性上皮細胞株に対するS100a6発現抑制によるRNAマイクロアレイを用いた網羅的解析、カルシウムイオン濃度の変化による既知のエナメル芽細胞マーカー分子の発現解析、BrdUまたはEdUを用いた染色による細胞増殖解析について比較を検討している。
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