研究課題
本研究はダイナミクスと連動した伝導特性の変調、制御による新たなメモリ材料の開発を目的として実施した。本年度は電場応答性の柔軟な分子集合様式を有する有機半導体の開発から、外部電場と連動した伝導特性の変調を目指した研究を展開した。有機半導体であるBTBT骨格に、強誘電性の水素結合鎖を形成可能なアルキルアミド基を導入したBTBT-NHCOC14H29 (1)、アルキル鎖をテトラエチレングリコール(TEG)鎖としたBTBT-CONHTEG (2)を合成しその構造-物性相関を検討した。1は403-433 Kにおいて電場-分極応答(P-E)曲線にヒステリシスを示した。また、蒸着膜を443 Kでアニールすることで結晶性の高い薄膜を作成可能であり、有機電界効果トランジスタ(OFET)デバイスに適用することで1.0×10-3 cm2 V-1 s-1の移動度を示した。このデバイスに443 Kから室温まで、電場印加によるポーリング処理を行うと半導体特性が消失し、電場印加せずに443 Kでアニーリングすることで半導体特性が回復した。強誘電体の電場応答性が有機半導体材料の分子配向・伝導特性と相関し、外部電場による半導体特性の制御が可能となった。2では、多様なコンフォメーションを取るTEG鎖の導入により、アミド置換π共役系強誘電体の中で初めて室温におけるP-Eヒステリシスの観測に至った。OFETデバイスを用いた半導体特性の観測には至っていないが、過渡伝導度測定や薄膜のXRD測定から、伝導層の形成は確認できており、さらなる材料設計により加熱冷却プロセスを経ずに半導体特性の外場制御が可能になると考えられる。外場応答型ダイナミクスの導入は、集合構造に特徴的な伝導特性に変調をもたらし、外部刺激応答性の付与が可能とすることを明らかにした。さらなる物性制御により、センシング、メモリ材料への展開が期待できる。
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