初期地球において、RNAのモノマーがどのように誕生したのかを調べるために、当時の環境を模擬した実験を行い、RNA構成分子の合成に取り組んだ。糖、核酸塩基の生成実験および、ヌクレオシド、ヌクレオチドの生成実験を行い、初期地球環境においてどのようなRNA構成分子が生成しうるか、現在の生命が用いるものとの違いはあるかなどを検証した。 RNAの基本骨格となるリボースリン酸の生成および、リボースリン酸を合成する原始的な代謝様反応の出発物質となる糖リン酸の生成に成功した。本成果は国内・国際学会で発表し、Scientifir reports誌に2本の論文を発表済みである。 核酸塩基やヌクレオシド合成のため、初期地球に豊富に存在していたと考えられるアルデヒドおよびアンモニアから反応を始めることで、現在の生命が用いるものとは異なる核酸塩基およびヌクレオシドが容易に生成することを見出した。本成果は国内学会で発表し、国際誌に投稿済みである。 現在の生命が用いる核酸塩基の生成実験にも取り組み、現在の生命が用いる全ての核酸塩基の生成に成功した他、その生成にには出発物質として用いた分子の量比が決定的な役割を果たしていることを明らかにした。本成果は、初期地球に留まらず、初期太陽系も含め、どのような環境で核酸塩基が誕生し得たかという知見をもたらすものであり、国際誌に論文を投稿準備中である。 現在の生命が用いるヌクレオチドの生成についても研究を行い、出発物質のリボースと核酸塩基から、アミドリン酸とホウ酸の存在下の元、一段階反応で生成することに成功した。リボースを出発物質とした一段階反応でのヌクレオチド生成は世界初である。また、アミドリン酸とホウ酸が反応の進行に決定的役割を果たすことから、初期地球においてヌクレオチドが生成した場所についても大きく制約できたと言える。本成果は国内学会で発表し、国際誌に投稿準備中である。
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